イアンさんの言い付けで、地上でミッションをこなすマイスター達に合流して早数日。今回のこれは休暇も兼ねているとは言え、動いていないと落ち着かなくて、ガンダムの整備は勿論、ガンダムがミッションで出払っている間にカレルの整備をしたり、最初の内は忙しくしていたのだけれど。
 毎回大した損傷もないから機体の整備はカレルに任せておける程度だし、OSのチェックも今日だけで既に三回はした。さすがにもうやることがない。
 観念したわたしはコンテナに併設されたレストルームに引き上げてきたものの、なんとなく手持ち無沙汰で、特に意味もなくぱたぱたとコンソールを叩いてみる。そんなことをしていると、シュン、と静かな音を伴ってレストルームの扉が開いた。「あ、ロックオン」。視線を向けた先のそのひとは、わたしが膝に抱えた端末を見るなり苦笑した。

「少しは休めよ。働きすぎだ」
「だって、他にすることないんだもん」
「休暇だろ? 何かやりたいこととかないのか?」
「整備」
「なまえ、」

 そんな風に口答えしていると、呆れたような溜息が落とされて、それから、やんわりと端末を取り上げられる。「ロックオンが見てないところで休んでるから大丈夫」。わたしは何でもないフリをして、取り返そうと端末に手を伸ばす。「……全く、お前さんも強情だな」。けれど、すぐに気付かれて、すいっと高く掲げられてしまう。そんなことをされたら、この重力下ではもうどうしようもない。悔し紛れにロックオンを睨むと、「そんな顔しなさんな」。困ったように笑って、ロックオンはわたしの髪を撫でた。
 そのあたたかいてのひらは、なんとなく安心する。けれど、よく考えてみると、わたしはロックオンのことを何も知らない。わたし達には守秘義務があるからだ。

「そういえば、ロックオンの誕生日っていつ?」

 することがないのも事実だし、端末を取り返すのを諦めたわたしはロックオンに訊く。これぐらいなら当たり障りないかなとか、やっぱりこれも守秘義務に抵触するのかなとか考えながら。「3月3日生まれ、うお座のO型だ」。そんなわたしの思考を読み取ったみたいに、ロックオンは訊いてないことまで答えてくれた。
 それにしても、3月3日って……あ。「ひな祭りだー」。聞き覚えがないのか、わたしの言葉に首を傾げるロックオン。わたしだって、前に本か何かで読んだだけで、詳しくは知らないんだけど。

「確か、日本の風習か何かで……女の子のお祭、だったような」

 うろ覚えの知識を引っ張り出しながら、わたしは思わず小さく笑う。「ふふ。なんか可愛いね」。すると、ロックオンは肩をすくめて、困ったように笑った。「おいおい、そりゃあどういう意味だ?」。
 わたしはどうしてかとても楽しくて、ついさっきまで所在なくコンソールを叩いていたことなんて、もうすっかり忘れてしまっていた。


(多分それは、恋に落ちた 瞬間)



きっと 一生忘れられないのだろうね
title:選択式御題
20110303(ハッピーバースデー!)
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