蠅王 | ナノ
キーンコーンカーンコーン、チャイムの音を合図に騒ぎ出す生徒たち。私の周りも例外ではない。寧々や千秋たちが駆け寄って来てそれぞれのお弁当を広げ、先程までの(形だけの)授業風景とは百八十度変わってしまった。

「葵姐さん、今日のお昼は購買ですか?」
「えぇ、朝時間が無かったのよ。何か欲しい物があればまとめて買ってくるわよ?」
「今日は特に大丈夫ッス!」
「私も。」
「そう、じゃあ行ってくるから先食べてて。」

いつも通りの日常に、ほんの少しの非日常。たまにしか行かない購買に心踊らせつつ教室を出ると、遠くで見知った二人が。

どきり、どきり、心臓を思いっきり掴まれたような苦しさが襲う。

「ダア!」
「ぐずぐずするな!坊っちゃまがお腹を空かせて…」
「うっせーな、さっきからそればっか!購買行ってからっつてんだろ!」
「貴様のコロッケなんて知ったこっちゃない!五秒で買ってこい!」
「とか言っててめぇも食べたいんだろ?しゃーねーから古市パシるか。」

仲良さそうに歩く後ろ姿といつも通りな会話内容。そして擦れ違う生徒の「ただのバカップルだろ。」「何だかんだ良い夫婦だよな。」

どきり、ずきり、どきり、ずきり。
そんな会話をしてるくせにお互い表情が柔らかいことだって、本当に意味で信頼関係が築かれてることだって知ってる、知ってた。

けど、

心の何処かでは私にもチャンスがあるんじゃないかって思ってたんだと思う。本当のお嫁さんじゃないってわかって安心したし、後ろめたい気持ちももうない。なのに。

私の入る隙はなかったんだ。

全身の力が抜けていく。立ってるのがやっとな代わりに熱くなる目頭。彼らは購買に向かったのだろうか、古市くんが行くのだろうか。

二人がお似合いなのは、きっと誰よりも知ってる、知ってるから、

どうか、せめて私の知らないところで。



公開バカップル!
(いちゃいちゃすんな、よそでやれ)










いちゃいちゃとは違うかもしれませんがこれしか思い浮かばなかったです(^q^)捻くれ管理人です。

今回、企画サイトを立ち上げまして、たくさんの方にご参加頂き本当にありがとうございました!
これからも邦枝葵がみんなに愛されますように、願いを込めて!