壊れてそして | ナノ
■ 身体測定

少し騒がしい廊下。男女共に音駒高校指定のジャージに身を包んで、紙を見せ合いながら笑い声をあげたり、叫んだりと何やら若干浮き足立っている様子だ。そんな中で皆より一つ頭が飛び出ている大きな男子。黒尾である。
「お前あと3センチで190cmかよ」
「そーね」
「ムカつくなその余裕!!」
「俺も175はこえて〜な〜。そういえば夜久はどうだったわけ?」
「やっくんはまだ測定中。そろそろ戻ってくるんでないの?」
クラスの男子と身長について話していると、女子の集団からは体重が増えただの痩せただの悲鳴が聞こえてくる。そんなに太ってるようには見えないけどねぇと思いながら黒尾は壁に背中を預けた。
「アロハ〜」
すると、春瀬がジャージのポケットに手を突っ込みながら近付いてきた。男子は前のクラスから順に測定したのに対し、女子は後ろの組からの測定だった。彼女のクラスは6組。既に終えていたようだ。
「うぇーい」
「うぇーい」
春瀬もまた黒尾の横に並んで、壁にもたれた。
「発表します」
「ドゥルァルァルァルァ」
「クロそれ巻き舌のつもり?!出来てないよ?!気付いてる?出来てないよ?!」
「うるせぇ恥ずかしいわっ!とっとっと発表してくださいお願いします!」
「おっけー!発表します!ダルァルォルォルォ」
「お前も出来てねぇよ」
本題に辿り着くまでがいつも長い。巻き舌ってどうやるのかね、ほんとな、そんなやり取りをして、春瀬は言った。
「161cmでした」
「結局また1センチ伸びたのね」
彼女は毎年必ず身長が伸びる。それを1年の時夜久に告げた時のあの顔が今でも黒尾は忘れられなかった。
「もうお前あれじゃない?このまま永遠に伸び続けるんじゃない?20年後には180、30年後には190……」
「やだよ!」
「俺もやだよ」
すると黒尾よりも更に嫌であろう男が真顔で帰ってくる。その表情を見ながらこりゃ変わってねぇなと黒尾は苦笑した。
「やくもん君おかえり」
「ただいま……。」
「……夜久君」
「聞くな黒尾。察しろ」
「やくもん身長伸びてた?」
「忠告すべきは黒尾よりも貴田だった……!」
夜久は苦虫を噛み潰したように春瀬を見て、そしてハッとした。
「まて。貴田と俺こんなに目線近かったか?」
「……」
「………お前まさか!」
「160こえました161cmデス」
「なんでだー!!!」
ばっかやろー!と夜久は窓の外へ叫び声をあげた。その姿を見てなんだよ夜久また伸びてなかったのかー?とクラスメイト達にからからかわれ、うるせぇ!と彼等を足蹴する。
「クロは何cmだったの?」
「ぼかぁー187cmですよ。」
「でかくなったねぇ」
「でかくなったでしょぉ」
「会った時はこんくらいだったのに」
「さすがに小指よりは大きかったと思うんだ…」
そろそろ担任に教室に入れと言われるたろうか。徐々に廊下から人が減っていた。
「研磨はどうだったかな?」
「あん?あいつはー……伸びてないんじゃね」
「お昼休みに会いに行こー」
「僕も会いに行こー」
行く時誘ってねんと春瀬の頭にポンと手を置き、2人は各々教室に戻った。


「黒尾よぉ、」
「あ?なに」
「前から思ってたんだけど、貴田さんとお前って付き合ってんの?」
「付き合ってませんよ」
「聞くだけ無駄だぞ。こいつら見てたらほんとに意味わかんねぇから」
「ヒドイねやっくん」
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