俺が家に帰るのに、どれほど苦労しただろうか。
きっと母さんは知らない。
でも、俺の顔を見た瞬間、泣き出した彼女に、俺まで泣いてしまった。
母さんは言った。
最低な親だから、家出されても帰ってきなさいって言えなかったと。
辛かったと。泣きじゃくった。

「でも、アキラの作文を見て、私、アキラを産んでよかったって思った。アキラ、辛い思いばかりさせているから、産まれない方がよかったかもって思ったけども、そうじゃないんだよね…」

「うん、そうだよ」

「……どうして、帰ってきてくれたの?」

「テレビで母さんの顔見たら、恋しくなって」

「アキラ」

「母さん」

ギュッと抱きしめられて、俺は戸惑った。
何時振りだろう。覚えていない。

「俺ね、一緒に生きて行きたい人がいるんだ」

「そう……」

「だから、高校生になったら、この家を出て行ってもいいかな?」

「それでアキラが幸せになれるなら、いいわよ」




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