4
「じゃあ、今日は記念日やね」
「そ、そうだな、うん」
「恋人記念日やね」
「お、おう」
「カレンダーに書きこんでもええかな?」
「恥ずいから、やめろ」
「じゃあ、書くね!」
「だから、やめろって」
「えーやだやだ。こればっかりは譲れへんな」
「も、もう……しかたないな」
「えへへ」
バランスの悪いハートマークを描いて、たーくんは笑う。子どもみたいな笑い方をする。しかたないので、俺も笑い返しておいた。
「な、な、アキラ。一カ月後は、一カ月記念日やね。あ、俺とアキラが初めて出会った日も記念日やね。他にもさ、一杯あるねんな、俺たちの記念日。なんや、そう思うと、幸せやな。こんなに幸せでええんかな?」
そわそわと、たーくんは部屋の中をくるくると歩く。
まるで、たーくんの時間が進みだしたみたいに。
俺はおかしくなって、微笑んでしまう。
[*前] | [次#]
目次
以下はナノ様の広告になります。