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どうしていいのかわからなくて、目をつぶってしまった。
するとものすごい力で引っ張られた。
「!」
すとん、と温かいものにうもれて、俺は、瞳を開く。
そこには、たーくんがいた。たーくんが、俺のこと抱きしめていた。
松田さんが、痛そうな顔をして頬を抑えている。
え?
「たーくん、暴力反対だよ」
先輩は苦笑いする。
え、殴ったの?
とは、聞けなかった。
俺は何も言えなかった。
たーくんがあまりにも強く、抱きしめてくれるから、何も怖くなくて。
何も、他のことが自分とは無関係な気がして。
「アキラにキスの仕方を教えるのは、俺や! 誰にも、譲らへん!」
「…………」
「嫌や、ずっと一緒に居たい。嫌やわ、ほんま、こんなん……」
「何がそんなに嫌なんだよ」と先輩が言った。
「俺だけを見て欲しいだなんて、馬鹿みたいや」
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