３
＝たーくんside＝
一目惚れって信じる？
俺はそんな馬鹿みたいな感情は信じない。
そもそも生まれてこのかた誰かに興味を持ったことがない。
人間なんてみんな酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すだけの哺乳類だろ。
みんな同じ。みんな、同じだから、俺は考えることが億劫になる。
俺のことが好きだと言えば、そばに置き。
俺のことが嫌いだと言えば、距離を置き。
別に構わない。俺自身、そんな彼らに興味がない。
ただへらへら笑って印象よく、適当に付き合っていればいい。
それ以上を俺は求めていない。
なのに……
突然、それは仕事帰りの道中、俺の前に現れた。
何処にでもいる、中学生。なのに、俺には【特別】な何かに感じた。
彼が纏っている悲しい空気にやられたのだろうか。
声をかけたいだなんて血迷ったことを思ったが、俺にはそんな行動力はないし、そもそも、彼がそんなことを俺に望んだりしないだろう。
だったら、いいや。別に。
人生って、なるようにしか、ならないし。
変に頑張って、痛い目を見るなんて、馬鹿らしい。
そもそも一目惚れって何だろう？
俺は彼の何を知っていて、好きだと、思うんだろう。
全くもって不可解だ。ていうか、どうして一目惚れなんだろう、俺。
どう見たって、どこにでもいるような容姿だったじゃないか、あの中学生。
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