朝、適当な理由をつけて家を早く出る。
少しでも家に居たくなかった。と、いっても、行くあてのない俺は、学校に向かった。まぁ、教室でゆっくりとしたらいいや。そう思ったのだ。
そう、思ったのだったが、気が付いたら、体育館裏へと足を進めていた。

「お前、何してんだよ」

体育館裏の木の下でぼやっと空を見上げている、金髪に問いかける。
金髪は険しい目をして、こっちを見る。

「……何しているんだろうな」

あまりにも綺麗に透き通る声だったから、俺は「え?」と間抜けな返事を心の底からしてしまう。
金髪はただマイペースに口を開く。

「俺も自分が何をしているのか、何がしたいのかわからない」

昨日の彼からは予想もつかないような力の籠った声で、険しい顔で言う。
なんだか、俺はそれが怖くて、しかたなかった。

「そんな、睨むような目で言うなよ」

「……睨んでない。今、しんどいんだ。痛いんだ、身体中痛い」

「痛いって?」

「わからない。どうして、こうなったのかも。どうしたら、治るのかも、わからない。消えたい。消えてなくなりたい」

「氷流……」



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