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何を言われるんだろうと身構えたのに、氷流の姉は『真佐のことよろしくね』とだけ言って電話を切った。
俺は突然のことに、しばらく、プープーといった電子音を聞き続けた。
「何だったんだ…」
俺も携帯を切る。
一体あの女は何がしたかったんだろう。
布団の上に転がって俺は考えた。
すると電話が鳴った。
「氷流?」
こんな夜遅くにどうしたんだろうと俺は慌てて電話に出る。
氷流は小さな声で『ありがとう』と言った。
俺にはお礼を言われる意味がわからなくて、意味を聞こうとしたが、ふと聞かなくてもいいような気がした。
そう、どうしてか、そんな気がした。
「あのさ、氷流」
『え? 何?』
「勝手なんだけど、父に氷流のこと話したんだ。そしたら、さ、あまり期待できるものじゃないらしいけども、知り合いの医師とかにいろいろと対策か何か、聞いてくれるって。だから、もう少し頑張って。痛いのは辛いだろうけど、俺、俺なりに、お前のためになれるように、あがくから」
『宮田…』
「……だから、諦めないで」
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