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緊張する指で俺はどうにか氷流の姉の電話番号を押し、発信ボタンを押した。
3コール目でずいぶんと綺麗な声が聞こえる。
『もしもし』
「あの、宮田ですけど…」
『あ、宮田くん? 電話遅い』
きっぱりとしたトーンで氷流の姉は言う。
その迷いのない声に、俺は向き合う意思を強めた。
「すみません。電話するか、しないか、迷っていたので…」
俺は正直に話した。すると受話器の向こうで『ふぅん。迷っていたんだ』とあざ笑うような声がする。
『でも、かけてくれて嬉しいよ。ね、私どうして貴方に電話番号教えたと思う? 一体何を話そうとしていたと思う?』
「それが知りたいから、電話しました」
『あ、そう。それはよかった。中途半端な奴だったら、どうしてやろうかと思っていたの』
「…………」
淡々と話す声に、ふと、俺はとある光景が頭に浮かんだ。
氷流が断っていた喧嘩の申し出を、陰でこっそりと引きうけている女の子の勇姿が頭に浮かんだ。
『あ、怖がらないでよ。べつに私怒ってなんていないし』
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