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そういえば、氷流はどうして俺に身体が痛いって、辛いって話してくれたのだろう。俺が、君のためになれることなんてないのに。
担任だってそうだ、どうして俺に、大切な親戚の子のことを話してくれたのだろう。俺が、力になれるとでも思ったわけ?
馬鹿じゃないの。
俺何もできないのに。
「わかった。どうにか話しをしてみる」
「え?」
氷流のことを全て話すと父はそう言った。
意味がわからない。
「だから、話しておくといったんだ。日本語もわからないのか?」
「いや、そういう意味じゃなくて…」
「ああ、俺の知り合いを総当たりして、そういった病名のない病気の治療法か改善法くらいは調べてやる。ま、見つからない可能性の方が高いけどな」
何もしないよりは、いいだろう、と父は言った。
無表情なのに、優しい声で、頼もしい顔で。
俺は、迂闊にも泣いてしまいそうになって、必死に涙をこらえた。
ありがとうって言えなかった。
ごめんなさいとも言えなかった。
ただただ深く頭を下げた。
「親子だろう。それくらいしてやる」
そう言って、父は俺の頭を乱雑に撫でた。
ああ、もう、涙、止まらなくなった。
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