「話すことがあるだろう」

父に呼ばれて部屋に行くと、めずらしく、仕事の書類を手にしていない父が真正面から俺を見つめてそう言った。

「なんのことでしょうか?」

俺は何を父に話すんだろうと、内心で毒を吐く。
すると父は困ったように笑い、直に険しい顔をして俺を睨んだ。

「誠一。抱えきれなくなった荷物は、一人で持ち続けると、破滅するだけだ」

「…………」

「別にお前がそうしたいなら、俺はもう口は挟まない」

「言って何になるの?」

俺はいい子ぶるのをやめて鼻で笑う。
かつての俺だ。

「俺がさ、言えば助けてくれるわけ?」

どうせ言ったって何も変わらない。
どうせ無理だろう。

「話しも聞かないのに、助けられるかどうかなんてわからないだろ。お前もたいがい馬鹿だな。ま、そうやって、どうせ何もしてくれないと決めつけて、自分一人で抱え込んでいるようじゃ、何も変わらないことは確実だ」

「………父さん、俺は」



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