まずは、自分に何ができるだろう。
大切な子のことだから、守ってあげたい。
でも俺は魔法使いでもなんでもない。
夜ごはんを家族で食べながら、考える。

答えなんてどこにもないのに。

「おい、誠一」

「へ?」

俺は父の声に箸を落とした。
俺の名前、久しぶりに呼んでくれた。

「何をボーとしているんだ?」

「なんでも、ないです。ちょっと、疲れてしまっただけで」

箸を拾いながら、俺は嘘笑いをする。
窮屈だ。窮屈でしかたない。
何をしているんだろう。
俺は、今、こんなところで、へらへらしている場合じゃないのに。

「誠一。無理はしては駄目よ。身体が何よりも資本だもの」

「そうそう、健康第一よ。健康じゃなきゃ、何も満足にできなくなるわ」

「……あ、はい。そうですよね。僕、ちょっと今日はもう寝ます」

何でもない振りをするのが、辛くて、出来なくて、今にも暴れ出してしまいたい衝動に負けて、俺は立ち上がった。
すると父は「後で部屋に来い」と険しい顔をして言う。



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