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「渡せって言われたんだ」
「……渡せって、誰だよ」
俺は猫をかぶるのも忘れて怒る。
今、俺は氷流の話をしていた。
なのにどうして真紀って女の電話番号だなんて俺に渡すんだ。
「怒るなよ。真佐の姉さんだよ、それ」
「え?」
どうして、と聞きそうになったら、担任は「弟想いのいい奴だからな」と遠い目をして言った。
「下手したら、思いっきり、罵声とばされる」
「それは、先生が、へっぴり腰だからじゃないですか?」
「猫被りに言われたくない」
「……あ」
「今さらまた被りなおしても遅いからな」
「わかってる。もう、面倒だし、被らないよ。なんだか先生相手に被るの面倒だし」
「そうそう、その顔。その根性据わった顔。いや本当、俺、宮田に頼んでよかったよ。あいつのこと」
無責任に笑う担任を前にして、俺は何処か虚ろだった。
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