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切なそうな顔をして話す先生を前にして、俺は、何処か遠くを見つめていた。
氷流は滅多にクラスにはこなかった。
俺はそれをあまり重要視しなかった。
体育館裏に行けば氷流に会えるから。
一人占め、できる。
最低だな。全く。
「先生。あいつ」
俺は口を開く。たぶん、開きたくなかった口を、開く。
「腰が痛いらしい。椅子に座り続けるの無理みたいだ。もって四時間。それ以上は顔面が崩壊しかけて、ひどく傷ついている」
氷流は言った。
やっぱり俺にはできないのかなって。
みんなと同じようにしたいのに、身体が、気力が、持たないって。
氷流は泣いた。
苦しいと惨めだと消えてしまいたいと。
勢いに任せて、吐きだした。
「俺には、一体何ができるんだろう」
「何もできないだろう」
「……そうですよね。これは俺の問題じゃないし」
「でも、話を聞いてやって、支えようとしてやることはできるだろう」
先生はそう言って俺にメモ用紙を差し出した。
そこには――――
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