第三話
=宮田side=
「なぁ、氷流。あくまでも噂なんだけど、お前、喧嘩負けなしらしいな」
お昼休み、体育館裏の木の下で弁当を食べながら俺は聞いた。
氷流は急にどうしたんだろうという顔をして、考え込む。
そしてポツリと「喧嘩したことないから負けたことないけど」と言う。
「そうだよな。お前が人殴ったりしているところ、想像もつかない」
「殴るだとか…」
そんなことはしないよ。と氷流は首を横に振った。
「だって、俺、力入れたら、身体が痛いし、早く動き回れないし」
「そうだよな。よかった」
「そうかな。なんか呼び出しをずっと体調不良で断っていたら、相手にされなくなっただけだけどな」
「え? お前、律義に断っていたのか?」
「だって……」
「だってじゃないだろう。そんな奴、無視したらいいのに」
「そんなの可哀相だろう。来ない奴を待つだなんて」
「……氷流?」
「何?」
どうしてそんなに切なさそうな顔をするのって聞けなかった。
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