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「ただいま」
誰もいないと思って家に入ると、姉さんが、仁王立ちをして待っていた。
「え? あれ、俺何かした?」
「何かしたの?」
聞いたのに聞き返されて、驚いて「え?」なんて俺はまた言ってしまった。
すると姉さんはゆっくりと頭を横に振って、にっこりと笑った。
普段、めったに笑わない人だから、何か企んでいるのかと身構える。
「ごめんね。つい、気持ちが焦り過ぎたわ。とりあえず、リビングに行こう」
「うん…」
俺が逃げると思ったのか、姉さんは俺の手を握ってリビングまで引っ張る。
宮田とは違って細くて小さい女の子の手だなって思った。
だけどドキドキはしなかった。
たぶん身内相手だからかな。うん、そうだな。
「座って」
普段は人の座る椅子なんて引いたこともない人が、気をつかってわざわざ引いてくれる。
ちょっと不気味であるが、俺は進められるまま座った。
すると姉さんは本当にすばやく俺の前に座る。
そして話し出す。
「今日、友達と会ったのよね! どこに行ったの? 何したの? 私ったら、朝、聞くの忘れてて。あ、いいのよ、言えないことがあったら、言わなくても!」
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