「侮っていたかもしれない」

宮田は映画が終わると同時に語り出した。

「可愛い絵をしていたが、内容の深いこと。いいもの見れたよ、ありがとう氷流」

「え、俺、別に何も」

「……白状すると、俺、一人だったら、この映画見なかったと思うから」

「?」

「ただ、氷流の喜ぶ顔が見たかったんだけど」

さらっとそんなことを口にして、宮田は椅子から立ち上がった。
俺は突然の言葉に胸が締め付けられて、ぼーとしていた。

「うん、ご飯でも食べに行こう」

もうこんな時間だしな、と高そうな腕時計を見て宮田は言う。
俺は先に立ちあがった宮田を待たせたら行けないと思って、慌てて立ち上がろうとしたら、目の前に宮田の右手が現れた。

「?」

「慌てない。ゆっくり、ほら、立ち上がって」

「あ、ありがとう」

初めての友達とのお出かけで、俺はわからないことが多くて、緊張して、でも宮田の優しさに触れて、嬉しくて、くすぐったくて、やっぱり困った。



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