「と、思ったけど【猫次郎】にしないか?」

「え?」

チケットを買う寸前で、宮田はそう言った。
あれ、俺、そんなにも不満そうな顔していたか?
宮田に余計な気を使わせているんじゃ…

「え、いいよ。宮田の見たいので!」

「俺の見たいので本当にいいの?」

「うん」

「じゃあ【猫次郎】で決定だ」

「え?」

「いいだろう。俺の我がまま聞いて」

ほら、行くぞと言って、宮田は俺の手を握って進んだ。
いきなり手を握られた俺はビックリして、どうしたらいいのか、分からなくて、おどおどとした。

握られた手を握り返すこともしなかったと、後になって悪いことしてしまったような気持ちにもなったけど、わざわざ謝るのも違う気がして、何事もなかったようにした。

(距離感がわからないな…)

俺、ちゃんと友達できたことないから、どこまで歩み寄っていいのか、どこまで遠慮しないといけないのか、わからない。



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