一時間目の授業が終わることには、氷流は落ち着きを取り戻した。
詳しい話は聞けなかったが、彼はどうやら身体が弱いらしく、最近は足がよくつるらしい。

「たいしたことないんだろうけどな」

氷流はそう言った。でも俺は頷けなかった。

「お前が、自分が、痛いって思うなら、それは、たいしたことだ」

だってそうだろう。
痛いものは痛いし、我慢できないものは我慢できない。
他の人にどうこう言われたって、それは自分自身の中で起こっている問題なのだから。

「教室、行けそうか?」

俺は立ち上がると、氷流に手の平を伸ばした。

「行かないと、いけないの、間違いだろ」

「ま、一般論言うとそうだけど、俺は、今、氷流本位で考えたい」

「…………変なの」

「変か?」

「ああ、でも、なんだろうな」

嬉しいな、なんて、可愛らしく笑いやがって、奴は俺の手をとった。
胸の中でキュンって音がした。
俺、本当、どうしたんだろう。



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