深君
2012/01/27 08:07



1.隠しもった哀れな想い


劣等感がいつでも俺の中から消えない。俺は生まれながら自分という人間が劣っていることを知っている。頑張らないと何一つまともにできない。笑っていないとただの根暗になってしまう。すぐに誰かを不快な気持ちにさせてしまいそうで。怖い。俺はそんな自分を誰かに知られることが怖い。自分自身、自分がいらないと思っている。だから、せめて他の人には「いてもいいんじゃない?」くらいには思っていてもらわないと、困るんだ。だってこの世界のみんなからいらないって言われたら、俺、可哀相過ぎるだろう。




2.捨てたものじゃないと拾ってくれた


そういう感情もいいんじゃないの?
だなんて、軽々しく言った奴が居る。そもそもどうして俺が自分自身の根底にある気持ちを話したのかさえも謎だが。奴は優しい笑顔一つで俺のことを見つめてくれた。嬉しかったのだと思う。もしかしたら、俺は心の何処かでこの人ならわかってくれるのではないか、受けとめてくれるのではないか、と期待していたんだと思う。だから、しいてそんなに嬉しかったわけでもなかった。ただ実感がついてこなかった。




3.君はいつも笑ってばかりだ


先輩は言う。俺のことを救ってくれた唇で言う。君はいつも笑ってばかりだと。とても真剣な顔をして言う。俺は言い返す。それを言うなら先輩の方が、笑ってばかりだ。ねぇ、先輩。先輩は本当に心の底から楽しくて幸せで笑っていますか?本当は何処か空虚感を抱えていませんか?貴方は繊細だから、心配になります。それに俺のあんな劣等感うんぬんの話、ただの脳天気な馬鹿が理解できるものだと思えません。したがって俺は決めました。先輩、俺、先輩のこと大切に思うから、だから……




4.ねぇ、泣き顔、下さい


どうして逃げるのですか?どうしてそんな怯えた目をするのですか?俺はただ貴方のためを思って、貴方のためだけを考えて行動しているのですよ?どうしてわかってくれないのですか?どうしてそんな嘘笑い、するのですか?俺のどこが貴方にそんなことをさせるのですか?俺が悪いのですか?ねぇ、答えて。ねぇ、泣いているなら、その顔を見せて。俺が受けとめてあげる。貴方が俺にしてくれたように、俺は先輩のこと……。だから、違うんですよ。俺は貴方にとってなにが最善か考えて行動しているだけで、ねぇ。




5.もっと深くまで知りたい知りたいんだ


悲しいんですか?可哀相に。俺ならその気持ち、わかりますよ?先輩を悲しませた人、俺が消してあげます。そうしたら、先輩、もう怖くないですよね。俺と一緒に楽しく過ごせるようになりますよね。そうですよね。だから、良いんです。俺。別に俺は先輩にさえ分かってもらえたら、世間からどのように見られても構いません。俺には貴方が全てなんですよ。だから、だからね、大丈夫なのですよ。そんな顔しないでください。俺のこと、心配だなんて言わないで下さい。俺は貴方のためを思って、貴方のためになりたくて……え?
今、なんて……。

























『深君』



























=先輩side=


深く深く眠っている君のこと、僕は何も知らない。
知ることなんて不可能だ。それくらい分かっている。
だけど、知りたい。僕は君を不安がらせるものから守ってあげたい。

僕がいたら、君は壊れていくだけだと思ったこともあったけども。

君が望むなら、僕だって君の傍にいるよ。

だから、僕のためだなんて言わないで。
君は君のために、僕と一緒に居て欲しい。

僕のことを愛してくれるなら、それと同じだけ君自身も愛して。
だって僕が大切な君が君から愛されていないと僕は堪らなく悲しいんだ。

ねぇ、わかる?
わかってくれるかな?

全部、嘘、だけど。




君が愛した僕は
君の作りあげた幻想だけど。

それでもいい。
君が必死になるなら。

君が明日も生きながらえたいと思ってくれるなら。





僕はそれだけで、いい、よ。








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