「可愛いね、ハート花火」
「……うん。カレと一緒に見られたら、もっと良かったのにな」
彼女の表情が曇る。断られたときを思い出させてしまったのかも知れない。今日はなんや上手くいかへんかったな、と肩を落とす。
「ううん、いい、クリスくんとで。楽しかったよ」
「あ、ごめんな、気を遣わせてしもうて。ありがとうな。ボクも楽しかった」
ボクのあかんたれ!とクリスは頭の中で自分をどついた。
「そろそろ帰ろ。送ってくわ」
うん、と彼女は頷き、クリスを見上げた。
「クリスくん、今日も相談乗ってくれる?」
(……なんでそんなうるうるな目ぇしてるん? そんなんされたら、くらっくらやわ)
花火の消えた夜空にも似た、暗い色の瞳に吸い込まれそうだと、クリスは思う。
「うん、ええよ。ほんなら歩きながら話そか」
駅を目指し、並んで歩き出す。何となく彼女の方を見られず、俯いたまま、からん、ころん、と響く下駄の音を聞いていた。
「好きだってわかってもらうには、告白するしかないのかな?」
ふいに彼女が呟いた言葉が、後頭部辺りに落下してきたような感覚だった。鈍い痛み。花火の音が響くみたいに、心臓が揺れているような気がした。
咄嗟に言葉が出ない。告白。上手く行ってしまったら。クリスには奨めることなど出来なかった。止めることも出来なかった。
「……せやな」
「そう、だよね。でも、今の関係壊すの怖いんだ」
「うん、それは、わかるで」
「だって、今は、親友なんだもん」
今カレと仲良いもんな、と浮かんだ言葉が、ふと消える。親友。ついさっき聞いた言葉だ。
(何考えてんねんボク? カレとのことやろ?)
歩みを止めた彼女が、じっとクリスを見ている。懇願するように、瞬き一つせずに。
なあ、とクリスは頭の中で問いかけた。
キミがボクの好きな薄緑の浴衣を着てるのも、
今そんな顔で見つめてるのも、
出掛ける前、ボクの携帯にキミのカレから『今日ヒマなんだよ』ってメールが届いたのも、
全部なんかの偶然なんやろ?
* * *
クリスの親友モードが大好きで勢いで書き散らしました。文章gdgdだけど満足。
蛇足→girl side
20120225