「どうしたの?」

 首を傾げる仕草1つに、胸が痛なる。
 冷たい風があの子のチェックのマフラーを揺らす。枯れた空気、冷たい風の味、この大地に立つボク。もうすぐ、もうすぐ終わる。
 その前に、この痛みのワケを告げたら、失わずにすむんやろか。じいっとあの子を見つめた。

 悩んだらあかん、悔やんだらあかん。それは、楽しく生きようとがむしゃらになっとった今までの日々を無駄にするみたいで、どこか怖かって、ボクはいつもみたいに笑顔を作った。

「あ、ゴメンな。キミに見とれてもーた」


 笑っていれば良かった。3年間楽しかってんって、悔いはないで、ってそれがココロの底からの言葉じゃなかったとしても、言う理由になれば良かった。
 そしたらきっと自分を騙し続けられるんや。
 そこまで考えて、ボクは“自分の決心がぐらぐらしてもーてる事に、既に気付いている自分”に、気付くんやった。

「クリスくん」

 おっきな目ぇの可愛い視線ビームが真っ直ぐボクの心に突き刺さる。
 楽しさもときめきもあってんけど、それといっしょに安らぎをくれたオンナノコ。高校に入ってからはじめて思えた。ゆっくりお喋りしたいーなんて。
 ボクの明るいとこだけじゃなくて、弱い部分も掬い上げてぎゅーしてくれるような子。焦りも不安も、この子といっしょにおった日はしゃーわせ気分の後ろに隠れてくれた。

「大丈夫?」

 なぁ、例えば今、大丈夫じゃないて言ったら、猶予は伸びるんやろか?キミとの別れはなくせるんやろか。
 ふーってゆっくりついた息の先で、空気が白く濁る。
「あんな、ボクな」

 うん?と笑うあの子があまりにいとおしくて、胸がぎゅーなってしもて、ボクの眉はダダ下がりや。
 ボクの進む道に、この子を連れていく勇気がボクにはまだないねん。
 この子に辛い思いさせへんって誓うだけの自信も。
「何でもあらへん。帰ろか」

 この子と、何も考えずにもっとひたすらに笑て遊んでしゃーわせな時間をいっぱい作ったら、後悔なんて消えてなくなるかもしれへん。
 もう少し、心のアルバムに思い出つめたら、あと少しあれば、この自由な日々ときれーにサヨナラ出来るのかもわからんやんか。……もう少しだけで、ええねん。
 そんな願いにまだしがみついとるボクは、臆病やなって思てる。じこ、せんよ……って言うんやっけ? 自己嫌悪?
 もう、何もわからんフリしてバカみたいに楽しくするだけじゃあかんて、とっくに気付いてんやんか。
 ボクはホンマあかんたれや。眩しく笑てるあの子を失いたくないって、この思いだけはもうはっきりしてんのに。

 ちょっとだけ痛くなった目ぇを隠すように見上げた空は、どこまでも高く澄んでいて、ボクは余計に自分がちっぽけに思えてしもた。





END
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特殊な喋り方の一人称小説って難しい
20111228
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