四十八手
*こたつかがり*
日頃使わない風華の部屋にやってきたときに、嫌な予感はしていた。
「風華サンのテーブルにも、炬燵布団掛けてあげますよ」
「でも、居間で読めばいいだけだから」
「まあまあ遠慮しないで」
その日、昼下がりに大好きな読書に勤しんでいた風華の元へ、小脇に炬燵布団を抱えた喜助が姿を現せた。
風華を立たせると、彼は白樺材で作ったテーブルの天板を退けると、若草色の炬燵布団をふわりと掛ける。その上に天板を戻すと、喜助は真っ先にそこへ潜り込んだ。
「ほら、風華もいらっしゃい」
彼は炬燵布団を捲り、胡座をかいたその腿を叩いて風華を呼ぶ。行かなければいつまでもそうしていそうだ。
はあ、と軽く息を吐き出すと、風華は彼の股の間に座り込む。喜助は破顔して、風華を抱えた。
「私、本を読みたいんですけど、」
「うん、いいよ」
また本を開いた風華を抱えて彼はゆらゆらと前後に揺れる。
今日は背凭れ代わりになってくれるらしい。
しばらく読み進めていると、「それ、面白い?」と喜助が尋ねてきた。
「ええ。先が読めなくてついつい最後まで読んじゃうんです」
「ふーん」
「喜助さんも読んでみますか?」
「ボクはいいや。でも、暇だから、ボクも遊ぼうかな」
読み耽りながら、なんとなく喜助との会話を続けていた風華はつい反応が遅れてしまった。
「風華サンと、炬燵を使って」
「・・・え?やっ!」
耳朶にひやりと濡れた感覚がして、背筋が跳ねた。喜助に嘗められたのだと判断する頃には、既に耳の奥に舌を捩じ込まれ、彼の両手が風華の内腿を擦っていた。
「・・・だめ、んっ、喜助さん、」
「風華は本読んでていいよ?ボクもボクの遊びに勤しむから」
耳の奥で直に響く濡れた音、合間に耳の入り口で囁かれる低い声音に鼓膜を犯されている。
すぐ流されてしまってはいけないと思えば思うほど、耳に届く音や内腿を滑る肌の感覚を意識してしまい、風華は自然に足を擦り合わせてしまう。
「んっ、やだ、」
ちゅっちゅっと、わざと肌に吸い付く音を立てながら、その薄い唇を彼女の首筋や項に滑らせてくる。
掌は未だに足の付け根まででそれ以上は触れてこない。じれったさに、ぐりぐりと腰に押し当てられている熱いモノに気が向いてしまう。
「ああ、ホラ、ちゃんと読まなきゃ」
「そんなこと言ったって・・・っ!」
「『読ませるつもりもない癖に』?」
彼女が口にするより先に、喜助が言葉を引き継いだように呟いて嗤う。
「そんな本より、たくさん満足させてあげるから・・・だから、ボクと遊んで?」
「んっ、や、だめ、・・・あぁっ、」
下着の隙間から熱く固いそれが押し入ってくる。ぐちゅ、と蜜が溢れ出たのが分かる。待ち望んでいたモノだ、と叫ぶように蜜壷が畝り出す。
「あ、・・・ぁっ、そこ、」
「ココ?・・・こうすると、もっと気持ちいいでしょ?」
「んっ、やぁ!だめっ!」
天板にしがみついて下からの突き上げに耐える風華の胸を服の上から鷲掴んでくる。ぐにぐにと強く揉まれ、勃ちあがった乳首を摘まみあげられた。
「ね、風華・・・はぁっ、一緒に、イって?」
「ンンっ、んっ、・・・あン、あぁああっ!!」
ぐっと奥歯を噛み締めて耐えようとしたところへ、間髪いれずに胸の先端、下の肉芽、それからぐずぐずに蕩けた中、と三ヶ所を同時に責められてあっさりと彼女は達してしまった。
「・・・どう?本より満足出来ました?」
「炬燵はこんなことする為のものじゃありませんっ!!」
「アハハ、ごめんごめん。・・・こたつかがりを試してみたかったから、つい」
でも風華も楽しんでたでしょ?気持ち良さそうでしたし、と悪びれもせず言ってのける男を睨む。
「・・・炬燵に縫い止められたいんですか」
「え?どういう意味っスか?」
かがりにも色々あるが、風華の脳内にすぐに浮かんだのは『かがり縫い』のことで。
炬燵に縫い止められたかの如く、板挟みで身動きできない女性の様子を表したのではないかと思う。
けれど、今度やったらその袖を炬燵布団に縫い止めてやる、と風華は内心ひっそりと、固く誓ったのであった。
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