幸せの足音

※未来設定。
※※子どもがおります。名前固定。



きゅっきゅ。
きゅっきゅ。

地面を踏む度に、可愛らしい音がする。

「ぱーぱ!まーま!」

娘はいたくお気に召したようで、何度も何度も小さな足を持ち上げては地面に力一杯押し付ける。

きゅきゅ。きゅっきゅ。
きゅっきゅきゅ。きゅっ。

命豊かに生い茂る藻の色をしたくりくりとした瞳を目一杯見開いて、娘はぴょんぴょん跳び跳ねて、またその音を鳴らしている。

「こらこら、ユキちゃん。あんまりはしゃぐと危ないっスよ」

けれど、娘は尚も嬉しそうに懸命に足を踏み鳴らして音を奏でる。
時にゆっくり行進するように、時に早く地団駄を踏むようにしては、音が鳴る度に、小さな紅葉のような手を打ち鳴らして破顔する。

「ふふ。幸穂ったら、あんなにはしゃいじゃって」

随分と気に入ったみたいね、と洗濯物を畳み終えた妻が居間に顔を出した。

「うん、そうみたい。オンナノコって本当可愛いっスねぇ」

新しい靴を履いて、縁側で一人はしゃぎ回る娘の様子は、まさしく目に入れても痛くないもので、ついつい目尻をだらしなく下げて眺めてしまう。

「ふふ、」

「どうしました?」

妻がなにやらまたくすくすと笑い出したので、喜助は首だけを捻って振り返る。

「ううん、なんでもないの」

"なんでもない"ことはないのだろう。けれど、彼女の陽光のような柔らかな微笑みに、喜助は『まあいいか』と瞼を伏せた。






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