その花の名は、
「おやおや。また今日は力入れましたねぇ」
「ふふ、そんな手の込んだことはしてないのよ?どれもこれも切って並べただけだもの」
「まァそうなんでしょうけど、でも、綺麗に七色に揃えてるじゃないっスか。えーと、トマトと生ハムとチーズと、」
「あとは、カボチャとアボカドとズッキーニとナス。野菜は軽く焼いてあるだけだから、こっちのドレッシングを使ってくださいね」
「はぁい。あーあ、残念だなァ」
「?」
「これで虹色のバラが贈れなくなっちゃった」
「あら、これも数に入るんですか?食べ物を並べただけよ?」
「でもさ、バラに違いはないじゃない。しかもわざわざ今日作るなんて。ワインもロゼだしさァ、意趣返しもいいところデショ?」
「そういう訳でもないんだけど、でも、いつももらってばかりだから」
「そんなことして、バラの品種が足らなくなったらどうしてくれるんスか」
「ごめんなさい、そこまでは考えてなかったわ」
「ま、いいデショ。いざとなったら新しい品種作って、アナタの名前でも付けますよ」
「それなら、私の名前だけじゃなくて、喜助さんの名前の品種も欲しいわ」
「えー...アタシの名前はいいっスよぉ」
「どうして?」
「いや、だって、花に自分の名前付けるなんて恥ずかしいじゃない。第一、ボク男だしね?そこんとこ分かってます?」
「ええ、分かってるわ。だから、同じ名前の花を二つ並べて飾りたいの。薔薇と鈴蘭を並べても綺麗だけど、同じ名前の花があるなら、それを並べたいわ」
「アナタはすーぐそーゆーコト言うんスから」
「いけませんか?」
「いーえ、お好きにドーゾ。で?」
「?なぁに?」
「だから、どんな品種がいいんスか?」
「...喜助さん、」
「はいな」
「もしかして、本気で作るつもり?」
「?ええ。そのつもりですけど?え、要らないの?」
「ううん、そうじゃなくて、」
「そうじゃなくて?」
「えっと、もし、本当に作ってくださるのなら、同じ名前の花がいいの」
「うん、ちゃんとアナタとボクの二品種作りますよ?」
「そうじゃなくて、貴方にもらった名前がいいの」
「!なるほど、そう言うことね」
「駄目かしら...?」
「いーえ、仰せのままに、姫君」
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別々の名前じゃなくて、二人、同じ名前の品種を作ってほしいの。
鉢植えでだって、ずぅっと一緒に居られるように。
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(『浦原』と『ウラハラ』、表記はどちらがいいかしら?)