好きの逆さまの裏返し
「おや、桜並木でも歩いてきたんスか?」

「ええ、そうですけど。どうして、」

「髪にお土産つけてるから」

「お土産?・・・花びらですか」

「いーえ、コレです」

「なんですか?ーーきゃあああっ!!」

「っ、そんなに驚かなくても。春なんだし、毛虫だって出ますよ」

「いいから早くそれ逃がしてくださいっ」

「あれ、虫、苦手でしたっけ?」

「苦手です、とにかく早く、」

「ハイハイ。虫も殺せないのによくまあ死神になろうと思いましたねぇ」

「それとこれとは話が別です!」

「そう?」

「そうです!・・・他についてません?」

「こっちいらっしゃい・・・ん、大丈夫だよ」

「・・・良かった」

「おやおや、涙目になってるじゃないっスか。本当に苦手なんスね。花育ててたら虫ぐらいつくでしょう?」

「それはそうなんですけど・・・、」

「アナタ、アレだね」

「・・・"アレ"?」

「男の子に虫とか蛙持ってこられて、よくからかわれてるタイプの女の子、・・・って、あれ、なんで逃げるの?」

「・・・今、まさに同じようなことをしそうな方が目の前にいるからです」

「やだなァ、そんなことしないって」

「その間延びした喋り方が信用ならないんですっ!」

「おや、ヒドイ。ボクって、そんなに信用ないんスね」

「そういう意味じゃ、」

「でもまァ、強ち外れてはいないかもね」

「・・・え?」

「あーゆーのって"好きな子程、からかいたくなる"ってことでしょ?」

「よく聞きますよね、その話」

「だからね、ボクもついついアナタにカワイイ悪戯を仕掛けちゃいたくなるんスよ。男の性質ですかねぇ」

「悪戯も度が過ぎたらただの嫌がらせですっ!」

「それもそうっスね。虫は止めておくよ」

「・・・"虫は"ってどういう意味ですか」

「んー?そんなこと言いましたっけ?」

「もう!喜助さん!!」

「あはは、ごめんごめん」


(だぁって、そんな顔されたら...ねぇ?)

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つまりそれだけ好きってコト!




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