滲む白光
「今年初めての、新しい陽が昇りますね」
「ええ。また新しい一年が始まりますね」
「アナタは、今年はどうありたいですか」
「そうですね・・・喜助さん、私ね、」
「ハイ、」
「朝焼けって好きなんです」
「ああ、綺麗ですよね」
「そう。それから、ほんの少しだけ、朝靄がかかってくれていたら、もっと好きなんです」
「・・・朝靄、ですか」
「そう。朝焼けって光が強すぎることがあるでしょう?」
「ええ、そうですね。眩しいぐらいに」
「その光を、少しの靄を和らげてくれて、街並みすべてを、静かに優しく白く包み込んでくれる・・・あの雰囲気が好きなんです」
「なるほど、アナタらしい」
「私も、そうありたいです」
「・・・アナタは、もう充分でしょう?」
「・・・え?」
「もう充分、そういう存在になれてますよ」
「そうかしら」
「アナタの存在が、ボクにとっては、既にそういう意味を持っている」
「喜助さん、」
「それだけでは、足りませんか?」
「いいえ、・・・いいえ、もう充分だわ」
「なら良かった」
「ふふ、私も喜助さんにそう思ってもらえているのが分かって嬉しいわ」
「ボクは困ってるんだけどね?」
「・・・?」
「靄で全体が見透せなくなるぐらいに、アナタに溺れてしまってるってコトなんだけど?」
「・・・えっと、あの、」
「これ以上ボクを溺れさせて、どうするつもり?」
「そ、そんなつもりじゃ、」
「不公平だよね、ボクばっかりこんなにアナタに夢中になっててさ。まさしく靄の中をさ迷ってる状態ですよ」
「えっと、その、」
「なーんてね」
「・・・?喜助さん?」
「アナタがその優しさで、ボクを包み込んでくれる」
「・・・私が、・・・」
「そう。だからボクは自分を見失わずに居られる」
「喜助さん、」
「変わらず、ボクの側にいてくれますか?」
「はい、勿論です」
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白く霞む世界を照らし出す光で在りたい。
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(ところで、今年のアナタの目標なんですけど、)
(はい)
(方向音痴を治すってのはどうです?)
(・・・・・)
(聞いてます?)
(・・・・・・・・・ごめんなさい)
(いやいやいや、チャレンジする前から諦めてどうするんスか)
(・・・だって、)
(言い訳禁止。そうしたら、ボクも余計な心配しなくて済むし。ね?それでいきましょ)
(・・・えっと、)
(返事は?)
(・・・・・・・・・はい)
(ん、宜しい)