旅log

第一回嫁会議録(その2)

かなりの衝撃を受けたこのスコーン。
驚くのはそこだけではない。



ジャム用のスプーンが、なんとスズランモティーフではないか。
思わずモティーフなどと普段言わない言い方をしてしまうほどにハイテンションになりつつ、しかし静かな喫茶店の雰囲気にはそぐわないと気持ちを抑えて、持ち寄った嫁品評会(という名のプレゼント交換タイム)を繰り広げる。


ここをご覧の方々ならば記憶に新しいと思われる嫁グラスの片割れ、そして月と星を模した紫色のピアスを。(デザインが気になる方は折村女史のblogを参照されたし。)
発見当時、デザインがあまりにも両家の嫁過ぎた為に、『こんなものが...!!』と勢い余って写真だけお送りしたところ、その晩にお揃いのそれを身に付けた嫁達のイラストが届き、やはりこれは実際に折村女史に差し上げたい!!!と先走って購入し、机の引き出しに半年もひっそりと仕舞われていたものである。
そのときのイラストの展示許可も近々いただきところ。
嫁会としては、嫁の素晴らしさを骨身を惜しまず広め語り伝えていきたい所存。

さらに言うと、金具が付け替えできないタイプのものだったのだが、むー家の方々が皆ピアスだったので、折村女史はピアス派だろうと推測して年末に先走って購入したところ(因みにこの段階ではまだ嫁会が決行されることさえ決まっていなかった)、イヤリング派だという事実が発覚し、

『なん、...だと...!!?』

と衝撃を覚えつつ、イヤリングコンバーターなる商品の存在を知り、イヤリングとしても使える状態でお渡しすることが出来た。


折村女史からは宝石のごとく綺麗な石鹸と、ティーポットをいただいた。
ミントグリーン、いや、もう少し青みがかった色合いともいえる。『嫁会のポットは是非これで』、といただいたので、今後嫁会の話を書くときはこれにお茶を入れてから夜のティータイムを堪能しつつ書くことにする。
誕生日祝いは既にいただいているにも関わらず、さらに手紙までいただいてしまった。本当に恐縮するばかりである。


テーブル上にささっと売り物の如くディスプレイをした後に、写真に納めてにこにこ、そわそわしつつ『一緒に写真撮ってもいいですか?』と首を傾げる女史の可愛らしさと言えば、筆舌に尽くしがたい。

なんだこの可愛い生き物は。

志摩家のお嬢が、跡家の娘を愛でているときも大概こういう状況なんだろうと沁々と噛み締めつつ、僭越ながらご一緒させていただく。

素晴らしき嫁会。
この辺りで既に心の中で号泣していたのだが、さらに追い討ちをかけるかの如く、折村女史が取り出したるは筆記用具とスケッチブック。

ものの数分で紙の上に現れたのは我が家の娘である。
当日に私が着ていた面倒な羽柄のワンピースを着せられた娘はその日の私のようにご機嫌な様子である。
羽柄、という話からふわふわとしたひよこが肩やら頭やらに乗り出して、ほわほわした空間が現れた。
癒しの空間である。
隣にその空間に『可愛い...!!』と悶絶している和氏が現れる。
分かる、分かるとも、その気持ち。
そしてそんな君も理想の嫁である。
何度も一人で頷きながら書き足されていくイラストを眺め続ける。

眺めながら、つい、『(むーさんの)足首いいね』と口を着いて出てしまうのは致し方ないことだ。
昨今の女子は括れのない格好をしていて嘆かわしい、という会長の呟きにうんうんと頷いてくれる折村女史をこっそりと嫁会の副会長に推薦しておく。

その他のイラストも含め、一枚目がほぼほぼ埋まったところで、日付とサインが入り、『要りますか?』と問われたのでこの日一番の高速で首を上下させる。ヘッドバンド並みで少々頭が痛かった。
帰ったらまず画材屋で定着液を買おうと誓いつつ。

私も何かネタでも、と思ったのだが、例えブログであっても文章を打ち出すと会話が上の空になる為、引き続き眺めておく。

二枚目の辺りでバラジャムが恋しくなり、ロシアンティーを追加。
ロシアンティーとはジャムを入れて飲むスタイルのことである。


これがそのロシアンティーである。



画像をよく見てほしい。
ジャム用のスプーンがスズランであることは先程と変わらない。
なら、何を言いたいのかと。






お分かりいただけるだろうか。

ティーカップとソーサーにも、薔薇とおぼしき花が描かれているのが......!!!

これには最早言葉もない。
この町の総力をあげて嫁会が歓迎されているとしか...!!
素晴らしき嫁茶会に感激しつつ、浦原氏のアイデンティティーは髪型であるという話に脱線し、前髪を括らせてみたり、仕舞いこんでみたりと遊びつつ二枚目がまた埋まる頃には気付けば17時。


荷物を纏めて、折村女史お気に入りの生パスタの店に赴く。
店内は薄暗く、古木を組んだような内装で、厨房をぐるりとカウンターが取り囲んでいる。
酸化防止剤不使用のビオワインが自慢、とのことでとりあえずはハウスワイン。



早速むーさんリングを指に嵌めてくれた女史と乾杯。
この議事録を纏めつつ、嫁ネイルの淡い色合いが可愛らしいと改めて感じ入る。




お通しの生ハム盛。
どこ産の生ハムか分からなかったが、脂肪分は控えめなようで、赤身が多い。女性は脂身が苦手なことも多いので、これぐらいの方がいいのかしれない。
個人的には脂身が好きなので、もう少々サシが入っていてほしいぐらいだが。

何よりハウスワインがかなりの甘口で、生ハムの塩気と喧嘩してしまい残念。
僭越ながら、メニュー的にもまだ酸味が強めのものをハウスワインにした方がいいのではないかと申し立ててしまいたくなった。惜しい。ゆっくり呑むつもりが、とりあえずその手元の一杯を空けて早々に二杯目に。


こちらはカプレーゼ。
カプレーゼとオリーブはいつでもどこでも頼む。
なんならお代わりしたいぐらいだ。
このカプレーゼもやはり油控えめ。フルーツトマトだから控えてあるのだろうか。
オリーブオイル好きとしては些か物足りない。
酒のアテ、というよりは、ジュースでもいけそうなぐらいだ。
よく言えばあっさり、悪く言えばパンチがない。
せめて黒胡椒をもう少し利かせていただけると呑みやすいのだが。



バーニャカウダーとカマンベールポテトサラダ。
バーニャカウダは塩気のあるあっさりソース。
続いてのポテトサラダが濃厚ソース。
バーニャカウダの付け合わせの野菜は珍しいものも多く、彩り歯応え共によし。女子会らしく野菜もしっかりと堪能せねば。
どちらの料理もソースは大変美味しいものだったのだが、ポテトサラダについているパンが水分が多いタイプのもので、合わせるには重すぎたように感じられた。
根菜やクラッカーなど、軽めのものにつけていただいた方がより美味しくいただけたのではなかろうか。こちらも惜しいところである。
嫁があーでない、こーでもないと云いながらグラスを傾けているのもいいな、と思いつつ次の一品に向けてワインを追加。




こちらがチチニエリ(しらすのピザ)。
元々生ハムとしらすが推されている店のようなので、是非とも食しておきたかったしらす。
成る程、これに関しては文句なく、勧められたアルゼンチン産の白ワインとも相性が良い。
トマトソースのようだが、酸味も控えめ、程好い酸味は寧ろ白ワインを引き立てるものでありいいバランスであった。
生まれが海の幸が多い地域であるが故に、なかなか魚介が食べられなくなってしまったという話で盛り上がる。下手に味を覚えてしまうのも問題だという結論に至りつつ、〆のパスタへ。


さて。私事だが、実は生パスタが大の苦手である。
パスタは乾麺派。アルデンテの歯応え推し。
塩多めの、きゅっと締まった噛みきる際にぷちんと弾けそうな程の麺の力強いまでの弾力が好きな私としては、当然生麺の柔らかさは愚か、もちもち、という単語にも惹かれないのである。



生パスタらしいもちもち感はありつつも、ぷちん、と噛みきれる程の力強さがあり、成る程これは食べられるなと。イカの歯応えも申し分なし。ふむふむと頷いて完食。
最後にお薦めのオーガニックティーをいただいて店を後にする。
カップの色が黄色ではなかったところが残念だが、パスタの皿がミントグリーンだったので良しとする。
やはり何かしら嫁会にふさわしきものが現れる。


最後に立ち寄ったのは、薫製の店。
薫製といえばウイスキーである。香木の薫りが染み付いた琥珀色の酒はまさしく我が嫁のイメージである。



改めて嫁会に乾杯。
ここまでで本調子には程遠い体調のままで既に四杯呑んでいたのだが、どうしても呑みたいカクテルがあり、途中でそれを追加。
その名はゴッドファーザー。
酒に自身のある方は機会があればぜひ。
度数高め中甘口、アマレット(杏の酒。味も薫りも杏仁豆腐まま)とウイスキーを割ってロックでいただくカクテルだ。我が娘ならばグラスホッパーでも構わない。
和氏にはぜひブルームーンを呑んでいただきたい。カクテル言葉は気にしてはいけない。いや、寧ろ一人で呑んでいて、声を掛けられる度にそれを追加してくれてもいいが。

ドライいちじくとチーズ、そして鰤の薫製を肴にちびちびとやりつつ、折村女史が本日二回目のお絵描きタイムへ。
程よく酒も入り、外面が保てなくなってきていた為に、嫁が花冠を株って花畑で手を繋いでいるという、花畑なのは頭の中だろうと突っ込まれても仕方のない妄想に文字通り花を咲かせる。
服装はどうするか、花は何がいいか。
神話の女神と妖精のようなイメージで、足元は裸足にして互いに色違いのアンクレットのようなものをしていても可愛いのではないか。
手首に細いリボンテープを巻いてその手を引いて歩いていたら素晴らしいと、妄想を繰り広げる酒も入ってエンジン全開な私の話に耳を傾けつつ、『こうかな?あ、分かった、こっちがいい!』とその場でラフ画(と呼ぶにはあまりにも描き込まれたそれ)を描いたところで、時間も時間の為にお開き。

帰りの駅前で、

『最後にhugしてもいいですか...!』

と問われて断る理由があるだろうか。
いや、ない。有るわけがない。
当然、二つ返事で諾の意を示す。
素面では苦手なので酔っているときで良かった。好意は嬉しいのだがどうにも不馴れでみっともなくおろおろして抱き返せなかったりする。酒の席ではむしろ絡みに行くのだが。
酒の力は偉大である。


時間にして凡そ十二時間にも及んだ第一回嫁会はこうして無事に幕を閉じたのである。




追記。
早々に第二回嫁会の開催に向けて準備をしろと指令が来ている。
各員、夏期休暇の申請を急ぐのだ...!


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