群れてると咬み殺すよ

「ギリギリセーフ…!?」

「全くだよ、もっと余裕持って登校出来ないの君」


本当に時間ギリギリに門をくぐる生徒に僕は声をかける。
この毎度毎度遅刻寸前になっている生徒の名は苗字名前。
あまりにも遅刻寸前を繰り返していたから、この間調べた。


「げ、雲雀さん!!」

「立ち止まって良いのかい?そろそろ本鈴鳴るけど」

「え、嘘『キーンコーンカーンコーン』…」

「…遅刻、だね」

「無遅刻無欠席狙ってたのに!」

「ワオ、どの口が言うんだろう。毎日遅刻寸前の癖に」

「雲雀さん、それは言わない約束です」

「君と約束なんてしてないけど」

「そこは文脈から察してくださいよ」

「それより早く教室行きなよ、咬み殺されたいの?」

「い!?いや、いい行きます行きます!!」

「後で応接室来なよ」

「分かりましたからー!」


そう言ってバタバタと走って行く遅刻魔は、僕からかなり離れた時、あっと言って振り返った。


「雲雀さーん、おはようございましたー!」


…全く君は変な奴だね。
そういえば、まともに話したのは今日が初めてかもしれない。
僕と怯えずに話す君に、少しだけ興味が湧いたよ。






昼休み、屋上へ向かう途中の廊下。
いつも通り草食動物達は僕に道を空ける。
ある者は怯えながら、またある者は逃げる様に。
それだけ僕が恐れられているという事だろうか。
それはそれで気分は良い。

あの子は何故僕を恐れないんだろう。
性格故か、はたまた無知故か。
多分後者は違う。本当に無知なら、僕を見つけた第一声が「げ、」な訳が無い。
「げ、」という事は少なからず僕を知っている筈だから。

一体何なんだろうね、あの子は。
何と言うか上手く言葉では言い表せないけど、不思議なオーラを纏った人物だ。






僕が屋上に出ると、何やら声が聞こえてきた。
この声はあの草食動物──沢田綱吉か。


「あー!名前ちゃんオレの卵焼き!!」

「てめえ十代目のおかずを!!」

「煩い動物だなー、ほらあれだよあれ。マフィア界は食うか食われるかでしょ?」

「名前ちゃんまでマフィアって!」

「ツナの弟が言ってたよ」

「おっ、苗字もマフィアごっこやってたのか?」

「リボーンめ、変な事名前ちゃんに吹き込んで…!!ってか弟じゃないから!」

「ああ、家庭教師だっけ?」

「い、従兄弟だよ従兄弟!」


どうやら遅刻魔も居るようだ。
それにしても、群れすぎ。

扉の中にまで聞こえてくる笑い声に、入るか入るまいか少し悩んだ。
だって群れる草食動物なんて見たくないじゃないか。
でも何故か入らずには、妨害せずには居られなかった。
僕は躊躇しないで屋上の扉を開ける。


「…」


ふと驚いた表情の彼女の姿が目に入った。
そして周りの草食動物に目を移すと、何故だろう…いらつく。


「ひいっ!!ヒバリさん、いつも以上に機嫌悪くない?」

「何で!?私達何もしてないよね!?」


何だろう、凄くイラつく。
この気持ちは一体何。
草食動物達が群れてるから…だけじゃない。
それだけじゃないのは分かるけど、分からない。
モヤモヤする。
よく分からないから…


群れてると咬み殺すよ

─嫉妬─



咬み殺してしまおう。



2012/10/18
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