ダァアアン!!
凄まじい音が辺り一面に響き渡った。
…その音は、私の顔の、すぐ横で。

「あか、赤司…!?」
「#名前#。その格好、なに?」
にこり、と爽やかに笑っているのに後ろに禍々しいオーラを醸し出している我らがバスケ部主将、そして私の彼氏である赤司征十郎は、
…どうやらとても怒っているようです。 
今の私の服装は魔女です。
大人っぽいデザインの黒い膝丈ワンピースの下に黒いタイツを穿いていて頭には黒い魔女帽子を被ってます。
全身黒ずくめですね。
それ以外特におかしな事はない筈だ。
「何、って魔女だけど…。
赤司は吸血鬼、だよね?
よく、似合ってるね」
「ありがとう」
似合っているね、と言うと目を少し丸くした彼は一瞬で元に戻り、にこり、とさっきと同じように、けれど禍々しいオーラは嘘のように消えていた。

それにほっとしたのも束の間。
「Trick and Treat?」
形の良い唇から紡がれたのは、ハロウィンではお馴染みの言葉。
「ふふっー!お菓子ね!はい!」
赤司の手をとり、大きい飴玉を1つ手の平に乗せた。
「お菓子あげたでしょ?
だから、離れて?」
そう言うも、一向に赤司が離れる気配はない。
「あ、かし…?」
「くくっ、#名前#、君ってほんと、」
馬鹿だよね。
耳元で艶っぽく囁かれる。
「ひゃっ、」
「僕が言ったのはTrick or Treatではなく、trick"and"treatだよ」
するりと自然な動きで太腿を撫でられ思わず掠れた悲鳴をあげる。
「こんな格好…、誘ってるとしか思えないな。
…さぁ、悪戯の時間だ。
手始めにまず君の血を頂こうか、それとも君自身を先に頂いてしまおうか」
ぺろりと自身の唇を舐めた赤司に思わず見惚れてしまったのは不可抗力だ。

『か弱き魔女は赤き吸血鬼に囚われる』



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