「委員長!?」
「うるさい、#名字#。
叫ばないでくれる?」
ギロリ、と私を睨み、鬱陶しそうに端正な顔立ちを顰めた彼の名は並盛中学校風紀委員長こと、雲雀恭弥。
所詮イケメンといわれる部類に入る彼はどのような顔をしてもやはりただのイケメンだった。
おっと、話が逸れてしまった。
私が話したいのは雲雀恭弥の顔ではなく、服装である。
普段彼が着ているのは学ランだ。
白いワイシャツ、ズボンはそのままだが問題なのは上着の方だ。
いつもなら学ランを羽織っている彼が、今羽織っているのはマントだ。
それも黒いマント。
「…なに?」
「も、もしかしてなんですけど、それ、ハロウィンの仮装、ですよね…?」
そう聞けば一層彼の顔が凶器と化した。
「…チッ、そうだよ。
赤ん坊に無理矢理着せられてね」
ムスッとした顔をしている彼。
「…Trick or Treat」
不機嫌そうな顔はそのまま。
小さく、それでいて発音が素晴らしく綺麗なその言葉はハロウィンではお馴染みなものだった。
「も、」
「…も?」
「持って、ません…」
「ふぅん?」
不機嫌そうな顔から一転、彼は意地悪そうな笑みをニヤリと浮かべた。
「じゃあ、悪戯だね」
ちなみに今いるここは応接室で、つまり逃げ場はない。
思わず後ずさるとじりじりと近寄ってくる彼。 
一歩後ろに行けば二歩前に踏み出してくる彼はドSだ。
壁に背がついた。
とん、と彼が壁に手をついた。
彼の整った顔が近い。
「安心しなよ、#名前#。
優しく咬み殺してあげるから」
ガプリ、首筋を咬まれた。

               
『愛が故に君を欲す』



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