01 好きだよ、でもね、


「ねぇ、赤司くん」
「…なんだ」
本から目線を逸らさず、背中を向けたまま振り向きすらしない彼はとてもめんどくさそうな声で返事をした。 
それに心が痛まない訳ではないけど、いつも通りの事だった。
―――私のこと好き?
そう聞いた声は酷く掠れていた。
「……………」
答えが返ってこないことはもう分かりきっていたけれど、
「別れよっか」
「……………」 
私と話す気すらもないのか終始無言の彼。
「今までありがとう、さようなら」
そう言って私は彼に背を向け立ち去った。

              
          『君が好きだよ、でもね、』
もう、愛されないのに疲れたの。
  






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