■ 揺れる瞳は悲しげで

「あ、赤司君っ…?」
 火神君とは違う赤い髪と、そして左右異なる黄と赤のオッドアイ。
ギリギリと手首を強く掴まれていて、正直凄く痛い。
名前を呼んでも返事はなく、ただこっちを見つめてくるだけ。
「#名前#、久し振りだね」

「っ、はい…あの、痛いですっ…!」
「あぁ、すまない」
力は少し緩んだがそれでもまるで逃がさないとでもいう風に強い力を込めている赤司君。   

此処は全く人通りがなく、静かな場所だったからか赤司君の声がよく聞こえた。

「#名前#」
端整な顔立ちをしてる彼が笑った。
その瞬間、私の体は後ろに倒れた。
赤司君が素早く私に足払いをし押し倒したのだ。  
背中を強く打って一瞬息が止まった。

私の両手は赤司君の右手によって頭上で纏められてしまった。

「っ、なにを」
「ねぇ、#名前#」
君は"俺"と"僕"、どっちが好き?
その問いに私は答えなかった。
…いや、答えられなかった。


           『揺れる瞳は悲しげで』
君も"俺"の方が好きなんだね。
そう言って笑った彼の顔はとても寂しそうだった。

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