■ 十人十色

「骸様」
「……………」
骸様は、私が話し掛けるととても嫌そうなお顔をなされる。折角のお美しいお顔が台無しだ。もったいない。
今だってそうだ。無視されてしまった。
少し悲しいがもう慣れてしまった。
「…書類、です」
「…………………… 」
すっ、と骸様の机に置く。
「失礼しました。」
ペコリと頭を下げ、重苦しい空気が渦巻いている部屋を足早に立ち去る。
「はぁ…」
「やぁ」
ビクゥッ!!
「………いきなり出てこないでくださいよ」
キッと話しかけてきた人物を睨み付ける。
クスクスと笑っている男を殴りたいのですがこの男はそう簡単に殴れないでしょうね。
この男の名前は雲雀恭弥。私の幼なじみでもあり、ボンゴレの最強の守護者です。

「恭弥、殴っても良いですか?
良いですよね」
「駄目に決まってるでしょ、馬鹿じゃないの?頭大丈夫?」
「ちっ、黙って殴られてください」
「ワォ、随分と荒れてるね」
「…最近寝不足なんですよね」
「そうなの、どうでも良いから、僕と戦ってよ」
「嫌ですよ、他を当たってください」
「「…………………………。」」 

下らない攻防戦の終わりは沈黙でした。
…本当に、相変わらずムカつく男ですね。
「はぁ………」
頭が痛い。
米神をグリグリと人差し指と中指でほぐす。
が、その手を掴まれた。
肩が大袈裟に揺れる。
「あのっ…?」
「ねぇ、」
男特有の低い声が耳元でする。
「あんな男やめて僕にしなよ」
優しくしてあげるから。
やめて、やめてよ。
そっと壊れ物を扱うかのように私に触れないで。
お願い、やめて、そんな愛しそうに悲しそうに私を見ないでよ。
そっと溢れてきた涙の意味さえ私は、解らないの。


「骸様…」
「どうしました、クローム?」
「もう少し、#名前#に優しくしないと…雲の人に取られますよ…?」
「………………」
「#名前#、可哀想……」

                       『十人十色』
それぞれの思いが複雑に交差する。


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