■ 緩やかに束縛を

するりと彼の体をすり抜けてしまう度に少し、悲しくなる。
私は彼が好きだ、けれども私にはもう体がないし彼には体がある。    

ちぐはぐな私達は似た者同士で似ていない。
顔のパーツ全ては似ているけど、髪色や瞳の色が違う。
それに一番の違いはやっぱり性別だろう。

「ねぇ」
ふわふわとリングから出て散歩してると彼に声を掛けられた。

「なんだい?」
また、戦ってとかいうつもりだろうか…。
身体がないから戦えないといつも言ってるんだけど。
それでもしつこいから最終的にはリングの中に引っ込むんだけどね。
彼を見下ろすと彼はリングに炎を灯した。
それもとてつもなく純度の高い大きな炎だった。

いきなり紫の炎に包まれ、突然体が重くなり地に膝をついてしまった。

「、なにを…」
「やっと触れられた」
そういって抱き締められた。
は?なんで触れられてるの?え?
「赤ん坊達に教えて貰ったんだ。
実体化させる方法。
成功するかは分からなかったんだけどね。
…約束通り戦ってよ?逃げないでね。
逃げたら咬み殺すから」
まぁ、どっちにしろ逃がさないけどね。
黒い手錠を私の手首に嵌めて、嬉しそうに目を細めて笑う君の笑みに思わず見惚れた私は悪くないと思う。

        『緩やかに束縛を』
もう逃がさないよ、#名前#?

アラウディ成り代わり。

裏設定。大量に炎を注入?…炎を大量に与えると実体化するという設定。

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