統べるもの



統べるもの
(統べるものになりたいと願った青年は、なんの力も持たなかった)


笛の音
(青年は力を持たなかったが、人間として生まれた。色を写す瞳も、小鳥の声を聞く耳も、立ち上がるための手足も持っていた。青年は素直ではない、けれども真白な名を持った少女に音を奏でて見せた。少女は何も持たない平凡な青年に、恋をした)


小さなもの
(青年はその音で小さな世界の小さな国の、もっともっと小さな場所の統べるものになった。それは青年の大きな一歩だった。)


神に愛された憐れな
(青年は神に似ていた。それは何も持たない青年を、持つものに変えてしまった。)


君をお嫁さんにしたかった
(青年は力を得ることを拒んだ。少女はそれすら拒んだ。力を得なければ、青年は死より苦しい道を行くことをになる。青年はそれを選べなかった。)


貫いていたのは君
(少女は青年と共に逝くことを望んだ。しかし、少女に刺さるはずの銀のナイフは、優しく笑う青年の胸に突き刺さった。)


貴方のお嫁さんになりたかった
(少女はただ泣いた。けれど、少女はわかっていた。少女は青年と違い、力を持っていた。青年を奪った神へ、宣戦布告する他ない。)


狂気に捕らわれ、お前を殺す
(少女は神へ全ての怒りをぶつける。しかし、神は少女の怒りなど少しも痛くなかった。少女を憐れに思った神は、少女の翳すナイフに刺されてやった。)


それは一瞬か、永遠か
(神を刺した少女は暗い部屋に入れられた。いつか青年が迎えにくるその日まで、待ち続けられるように。)


それは泣きたいくらいの終わり
(どれくらいか時が立ち、暗い部屋に光が差し込む。倒れ込む少女に声をかけるのは、神。神は言う)







「とても時間がかかってしまいましたが」



【統べるもの】に、なりましたよ。






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