- ナノ -

第3日 海と大地を創り、大地に草と樹を芽生えさせた


彼の変わっている所は、大小あるが、その中でも人の違和感を引き摺り出すのは小の部分だ。
大の部分は彼が口を開かなければ見えない部分だ。しかしその分インパクトも大きく、衝撃的だ。しかし、小の部分は何もせずとも彼から零れ落ちる。
例えば、同じ年齢だというのに思慮深かったり。例えば、周囲を見る目がまるで老いているようであったり。例えば、嫌がらせを受けた時の返し方がまるで先生のようであったり。例えば、私がナマエを心配して涙を流した時にまるで彼自身が悪いことをしたように謝罪して見せたり。
世界の全てが既に分かり切っているのだという様に、彼は冷静で飄々としていた。笑みは時折皮肉めいたものになり、時折疲労した様に溜息を吐いた。
そんな部分は私以外の周囲にも伝わり、彼は変わっていると専らの評判だった。しかし、私は知っている。その言葉の中に確かな羨望があると。

「君は凄い人だ」

私なりの言葉で思っていることを伝えたことがあった。
口足らずで言葉足らずの私にはそれが精いっぱいであったが、それでも言わずにはいられなかった。
彼と共に過ごす月日が一年を過ぎ、私が彼と共に経験した出来事も数えられないぐらいになっていく。その中で彼に助けられることが多々あった。それは彼の頭脳であったり機転の良さであったり、体力であったりと様々であったが、私が彼に対しての称賛の言葉を出したいと思うほどには大量だった。

彼は、先生や他の学友、学生の前ではあまり顔色を変えない。
だが、彼は驚いた表情をした。彼は、私の前ではよく表情を変える。寧ろ、ころころというのがピッタリくるように頻繁に色々な顔をしていた。

「なんだよ、いきなり」

はにかむように笑って、それから抱きしめてきたナマエに焦った。
彼はスキンシップが激しい方で、私は触れられるたびに驚いたし、焦っていた。彼と近くなると身体が熱くなって頭が真っ白になってしまって、自分が何を言っているのか分からなくなるからだ。
それでも、彼がとても嬉しそうに笑うので、私はそれを嫌とも思えなかった。

彼は変わっていた。でも私にとってはそれは全て羨望すべき部分であったし、憧れる所だった。