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▼ 狂乱の座談会

ん? ここは何処だ?
目覚めてみれば、全く知らない真っ白な空間にいた。
自分の踏みしめている床しかわからない、上も横も、どこまで続いているのか予測不明だ。
なんでも起こるヘルサレムズ・ロットとしても、こんな事態は初めてだ。
どうにかして脱出しなくてはならない。じゃないとクラウスにも会えないし。クラウスに会えないなんて死んでいるようなもんだ。
とりあえず血凍道で天井がどこまで続いているかを判断するか――しかし、不思議なのはこの空間にいる事について、何の不信感や危機感を抱かないことだ。そういう術式が施された場所なのか、それとも本能がそう判断しているのか。前者なら面倒なことこの上ない。

――あれは、ザップか?

氷柱を出そうとしたときに、ちょうど視界の奥のほうに米粒ほどの物体を見つけた。
あまりに丁度よく発見されたので、何かの幻影かと思ったが、その銀髪に褐色の男は同時にこちらを見つけたらしい。こちらに手を振って

「スティーブンさーーん。ここ、どこなんですかね?」
「……誰だ?」

なんだかよくわからんが物凄く違和感のある声のかけ方をしてきた。
いや、別にいつもと大きく異なる部分はない。声色は一緒だし、声の調子も同じだ。
ただ、あいつは俺のことをスカーフェイスと呼ぶはずだし“ですかね”なんていう言葉遣いは滅多にしない。即ち。

「ここに閉じ込めた元凶か何かか? とりあえず凍っておけ」
「おうわッッ!? 何するんですか、ちょっと!」
「お前こそなんなんだ。ザップの真似をするにしてももう少し完成度を上げておけ、気持ち悪くてかなわない」
「真似って……アンタ、もしかして」

遠くの距離を歩きながら詰めてゆく。その際に氷柱でザップ似の何かを貫こうとすることを忘れない。
腹を貫いてもまぁ生きているだろう。しかし相手もなかなかに実力があるらしく、ザップと同じ血法で防いでくる。
面倒だな、と一気に地面から凍らせて氷像にでもしてしまおうかと画策していると、ザップ似の男がとんでもないことを言い出した。

「原作のスティーブンさん……?」
「……お前」

その言葉に思わず攻撃を停止する。一定距離を保ったまま、相手を見つめる。
ザップ似の男は、俺がよく見るザップとは明らかに異なる。それは態度であったり言葉遣いであったり、何よりは言動だ。
アイツは、この世界に“原作”があることを知らない。知っているわけがない。
つまり、考えていたことの先があったというわけだ。
こいつはザップではない。そして――ザップという人物の中に違う人間がいる。
俺も、そういう人間ではあるんだが。

「つまり、なんだ? ここは“そういう奴ら”のたまり場ってか?」
「あー……そうかもしれませんね。っていうか、スティーブンさんめっちゃ怖いんですけど」
「当り前だろうクラウスは何処だ」
「え? クラウスさんも来てるんですか?」
「来てるわけないだろう。俺のところのクラウスはクラウスだ」

ザップが少々ひきつった顔でこちらを見てくるが、なんだというのだ。
初対面だというのに馴れ馴れしいし、敵ではなく同じ被害者のようではあるが事によっては氷漬けにしてしまおうか。
しかし、ここが“そういう奴”……つまり、別世界で新しく暮らすようになった人間たちが集まる場だとしたら。
どういう風の吹き回しか、それともただの幻影か夢か。

「とりあえず、外に出る手段を見つけましょうよ。ここは協力して」
「……普段のザップなら暴走するだけだが、ずいぶんと利口に成長したもんだな」
「まぁ、流石に『迷惑』って言われたら利口にもなりますよ」

少し困ったように笑うザップの顔をしたそいつは、あまりにもいつも見ているザップとは違う。その笑み一つで別人だと誰もがわかるだろう。
それに、少し思案する。こいつは、誰かしらに『迷惑』と言われたようだ。そして、それが切っ掛けとなってこうなった。
それならば、それを言われる以前はザップのような性格だったのだろうか。

「協力して外に出る手段を見つけることには同意する。だが――俺から言わせてもらうと、周囲の意見に惑わされず、自分の好きなようにやればいい。俺はそうしてきた」

ちょっとしたアドバイス――いや、先にこの世界にやってきて、レギュラーキャラクターとして生を受けた俺からの主観的な意見だ。
それぞれに違った結論がある。だが、俺はすでにそこにたどり着いていた。だからこそ、なんとなく言いたくなったのだ。
ザップの姿をした男は、きょとんとした顔をした後に、苦笑いを零した。

「やっぱり、どこの世界でもスティーブンさんには敵いませんね」
「言っていろ」

あまりにもザップの顔に合わな過ぎて、すぐに顔をそらした。気分が悪くなりそうだ。違う人間だと認識していてもこのざまだ。早く外へ出たいものだ。

そう考えていれば、ふと目線を向けた先にまた小さな米粒が二つほど見えた。
今度はなんだと目を細めてみれば、そこには――

「……クラ、ウス」






「クラウス?」
「む、スティーブンではないか。ここは何処だか知っているか?」
「いや、僕も今気づいたばかりなんだ」
「そうか……いやしかし困った。確か私はPS4で三國無双のエンパをやっている最中で夏候惇の女体バグで男主人公とくっつけて漸く子供を産ませようとしていたところなのに寝落ちをしてしまったのだ」
「…………………………………ん?」

なんだかよくわからない単語を聞いた気がする。いや、聞いたことはある。三國無双も知ってるし、夏候惇だって知ってる。女体バグとやらは知らないけれど、でも、あれだ。あれだろ? PS4ってゲーム機器で、三國無双っていうソフトの、夏候惇を……クラウスがゲームで遊んでる?

「く、クラウス。いつから君はそんな、ゲームに詳しくなったんだい?」
「いつって最初からだろう。むしろ君と初めて会った時もゲームボーイを持っていたはずだが……む?」

どういう事だ。僕がクラウスと出会ったのは僕が屋敷でまるで人形のように過ごしていた時で、その時彼はゲームボーイなんて機器は持っていなかったはずだ。僕を正気に戻して、人間に戻してくれた。そして彼についていこうと思った。そうであるはずだ。“俺の世界”では。
クラウスと見つめあう。そこにはやはり翡翠色の瞳と、強面である顔がある。身長も同じで、言ってしまえば眼鏡も――眼鏡が違う。
クラウスは、ふむ。と言って眼鏡を外した。そうして眼鏡ふきを内ポケットから取り出してガラスを拭きながら口を動かす。

「これは実は某ヱヴァンゲリヲンのコラボ眼鏡で、カヲル君モデルなのだ。まぁこれを選んだ理由としてはやはりカヲル君が群を抜く腐キャラであることがあげられる。いつもお世話になっております。そして勿論シンジモデルも購入済みだ。保存用としてもう一つ買っておいてありそれはライブラの私室にてカヲル君モデルの隣に保管を」
「うわぁああああああああ!!!」

わかった、分かったから! 君も日本から来たんだな!? クラウスじゃないんだな!? わかったからクラウスの顔で腐談義はしないでくれ!! 君が筋金入りなのは分かったから、分かったからぁあああ!

「ハッ、もしやその反応……私にはわかるぞスティーブン。君は、君の世界ではクラウスとスティーブンはこいな」
「それ以上はいけない! っていうかなんで分かった!?」
「ふぅ、知らないのかスティーブン。私のような人間は一目見ただけで相手の男の恋人が同性か分かるのだ。その様子だと日本においては腐ってはいなかったな? ダメだぞ。そういう時のために予習復習は欠かさず行わなければ、というわけで二人の初体験から」
「うわああああああああああああ!!!」

何が予習復習なんだ! なんだこいつホント怖い! 前世の腐っていた女友達を思い出させる!
食い物に、食い物にされる――こんな恐怖だったのか。対象になるということは――そして否定できないのが辛いというかなんと言うか。
否定されるのはまだ耐えられる。俺がクラウスに見合っていないからと思えばいい。しかし平然と受け止められた後(というか口に出してもいない)に寧ろ初体験を聞かせろと想い人の姿で迫られるなんてなんの拷問だ!!

「ここで会ったが運の尽き。私に教えるのだ。さぁ!」
「“さぁ”じゃない!」

気が付いたら見知らぬ空間にいて、だが危機感も抱けない不可思議な感覚を覚えている中でクラウスに会えたと思ったら……くそ、どうしてこんなことに!






ここはきっと、リトルアキバで開催される夏コミに出す小説を仕上げられたことに対するご褒美である。
私は“違う世界の”スティーブンと会話をしながらそうしみじみと実感する。
私は頑張った。あれはレオを模した主人公の総受け本であったが、全頁数が三百を超え、ちょっとしたライトノベル以上になってしまった。
だが、その代わりにチェインからの評価も上々。出来立てをすぐに渡して読んでもらったのだが、涙を流しながら売れると太鼓判を押してもらうことができた。完全に最高傑作だ。ああ、神よ感謝します。
そう思っていたら、この空間である。すべてが白に包まれたこの場所で、私はスティーブンを見つけた。
しかし、それは“私の世界の”スティーブンではなかった。

まず私がゲームの話をして、適当にあしらわれなかったのを不思議に思った。

「ん?」

たっぷり間を溜めて、疑問符を出したスティーブンに、久しく見ていなかった初々しさを感じ取った。
トゥンク。なにこの番頭可愛い。いやしかし、とりあえずは一応説明をしておこう。

「く、クラウス。いつから君はそんな、ゲームに詳しくなったんだい?」
「いつって最初からだろう。むしろ君と初めて会った時もゲームボーイを持っていたはずだが……む?」

スティーブンの顔がまるで信じられない、とでもいうように変貌していく。
それに萌えを感じながらも、私は一つの疑問を持っていた。その疑問を解決するために更に畳みかける。
自身の眼鏡をとって、眼鏡ふきで拭き始める。ぶっちゃけ原作との差異が仕事着だとこれぐらいしかないのだ。

「これは実は某ヱヴァンゲリヲンのコラボ眼鏡で、カヲル君モデルなのだ。まぁこれを選んだ理由としてはやはりカヲル君が群を抜く腐キャラであることがあげられる。いつもお世話になっております。そして勿論シンジモデルも購入済みだ。保存用としてもう一つ買っておいてありそれはライブラの私室にてカヲル君モデルの隣に保管を」
「うわぁああああああああ!!!」

叫びだした。どうやら限界値を超えたらしい。
頭を抱えるスティーブンはとても愛らしい。いいな、今度はスティーブンを総受けで書こう。これは決定事項だ。
さて、折角なのでもう少し意地悪を――ではなくちょっと話を聞かせてもらおう。

「ハッ、もしやその反応……私にはわかるぞスティーブン。君は、君の世界ではクラウスとスティーブンはこいな」
「それ以上はいけない! っていうかなんで分かった!?」
「ふぅ、知らないのかスティーブン。私のような人間は一目見ただけで相手の男の恋人が同性か分かるのだ。その様子だと日本においては腐ってはいなかったな? ダメだぞ。そういう時のために予習復習は欠かさず行わなければ、というわけで二人の初体験から」
「うわああああああああああああ!!!」

マジでかもう少し詳しく。
いやぁもしやもしやと思っていたが、マジで妄想、じゃなくて想像通りだったとは!
そして腐っていてもそんな観察眼は身につかない。むしろ全ての男が同性と付き合っているように見える千里眼が身に付く。
にしても“私の方の”スティーブンなら私に鋭い突っ込みを入れるところだが、ボロを出してくれるあたり中々に優しい性格なのだとわかる。優しいことは美点だが、原作のスティーブンと同じように活動をしているのなら大変ではなかろうか。あれは一般人がやっていれば精神的に辛いこともあるだろう。だからこそのクラウスとの恋仲だろうか。いや、別に私の世界のスティーブンが腹黒とか冷徹とかそんなんじゃないが。別に冷血漢とか思ってない思ってない。取引先相手の尻をヒールで踏んでるとかそんな想像してるわけないじゃないか全く!

とりあえず今のところは目の前のスティーブンだ。こんなに愛らしいのだから、やっぱり受けだろうか。いやいや原作のクラウスはあんなにも天使であるし、あっちが受け? だがしかし男前なクラウスのことだ。あの包容力でスティーブンを丸ごと包み込んでいるかもしれない。ああ、クラステとステクラどっち!? どっちでもいい! 寧ろリバでもいい!

「ここで会ったが運の尽き。私に教えるのだ。さぁ!」
「“さぁ”じゃない!」

じゃあ土下座でもなんでもするんで教えてくださいスティーブン様ッッ!!

と、ちょうどその時だった。スティーブンに詰め寄っていた私の目の前に氷柱が飛んできたのは。







うわぁ。あの旦那、絶対中身腐女子だ。
そうわかってしまう程度には身振り手振りがハイテンションだった。
会話の内容は遠すぎて聞き取れないが、スティーブンさん(二人目)が頭を抱えていて、興奮気味の旦那に困らされているのは十分にわかる。時折聞こえるスティーブンさん(二人目)の叫び声は哀れとさえ思う。俺も俺で腐ってるから、原作メンバーにはセクハラし放題で女性関係もガバガバだったが、なんだろう。旦那でやられると中々クるものがある。救いなんてなかったんだ! と思ってしまう。なんでだ。
いやぁ、性格変わると本当にキャラも変わるなーなんて思いながら顔をひきつらせつつ、俺たち以外の転生組というのだろうか、その二人を見ていると、隣にいたスティーブンさん(一人目)が動いた。
このスティーブンさんは、なんというか俺の世界のスティーブンさんよりもおっかない。俺の世界のところでは、いつも飄々としていて冷静だが、このスティーブンさんはどちらかというと素っ気なく、目が若干死んでる。周囲に対しての興味が薄いような気がする。そのせいか冷たく感じるのだ。
にしては俺に教訓というか、アドバイスをくれたし根はいい人なのだと分かる。ただ……なんだろう、一つのことに興味が吸い取られているような感じか?

スティーブンさんからのアドバイスは胸に刻んでおくとして、スティーブンさん(一人目)はジッと遠くの二人を凝視している。
その目が、なんだ、なんか、死んでるんですけど。さっきまで一応生きてた目が、完全に死んでるんですけど。

「す、スティーブンさん?」
「……あれは何だ」
「なんだって、スティーブンさん(二人目)と旦那っぽいですね。でも俺たちと同じで中身は――」
「――赦せん」

え? 何言ったこの人?
スティーブンさん(一人目)は、般若のような顔で二人のほうを向いている。目は死んでいるのに般若とはどういうことだ。
とりあえず、このスティーブンさん。やばい。

「お、落ち着いて下さいって、ほら、ここから出なきゃですから。ここは一旦怒りを」
「何を言っている?」

眼球だけがこちらを向いた。その目には光はない。だが、ただ一つ怒りではないものが浮かんでいた。
濁っている瞳に浮かんでいたものは、殺意という純粋な想いだけだった。濁って歪んで、それは狂気じみている。

あ。これホントやばい。
ゆっくりとポケットに手を忍ばせてジッポを握る。この人が何かする前に止めなければ――しかし、それは一歩遅かったらしい。
殺意の塊を確かにこちらに向けたまま、しかしその足から氷柱を一瞬のうちに出現させ、その氷柱の頂点部分に回し蹴りをかました。

「!!??」

こ、この人慣れすぎだろ!
驚いている間にその氷柱は上部分、ちょうど頭ほどの大きさで折れ、そのまま吹き飛ばされる。
その氷柱は当たり前のように遠くにいた二人の元――いや、旦那へと吹っ飛んでいき――

「チィッ!」

旦那はそれを拳で破壊した。
さすがだ。中身が違ってもその反射力は変わらないらしい。一安心していれば、隣で盛大に舌打ちをしたスティーブンさん(一人目)はそのままスタートダッシュを切った。まるで風が駆け抜けるように走り出したスティーブンさん(一人目)に呆気にとられ、ワンテンポ遅れてその背を追った。
だめだ。このままだと、絶対に――絶対に戦いになる!!


「二人目のスティーブンだと!?」

旦那の姿をした誰かが驚きに声を挙げる。確かに、俺も同じ姿をした奴がもう一人来るとは思わなかった。
だが、スティーブンさん(俺にとっては一人目)は意にも介さず旦那へと接近する。
動く気配のない旦那に、思わず叫び声を挙げた。

「おい逃げ」
「最高だ! 是非ともスティスティを頼む!!」

ダメだなこれは。っていうかそれは俺も見たい。
しかし般若のスティーブンさんに腐トークが通じるとも思えない。そしてその想像通り、スティーブンさんはそのまま旦那へと突っ込んでいった。
スティーブンさんの容赦ない蹴りが旦那へと炸裂する。それを腕で防御して見せた旦那とスティーブンさんは確かに視線を絡ませていた。
スティーブンさんは先ほどにも増して顔を狂気に染めたように歪ませ、そして叫んだ。

「クラウスの贋者め。お前ごときがクラウスの名を、姿を! 騙るな!!」
「……ほぉ」

怒りではない。そんな場所はすでに超えているのだ。そこにあるのは殺意だけ。
それを直に受けた旦那は、薄らと口角を上げた。こっちもなんでこんなに余裕気なんだ理解できねぇ。
旦那はスティーブンさんを振り払い、両者の距離が開いた。
攻撃を受けた旦那のような誰かは、やはり口角を上げたまま、臨戦態勢をしつつ尋ねる。

「なら、誰ならクラウスを名を騙ってもいい?」

うわこいつ火に油を注ぎやがった。
まるで殺意の結晶となったような瞳が旦那を凝視している。
もうどうにもならない。俺は被害が及ばない程度、もしもの際に逃げられる程度の場所へと避難した。
誰が名を騙ればいいか、なんて今のスティーブンさんを見ればわかるだろ。
スティーブンさんは今すぐにでも噛みつこうとする獣のような体制のまま、それでも旦那へと応えた。

「全てだ! 神でさえもクラウスを騙ることなど赦されない! いいや違う、神はクラウスだ。神を騙ろう等と、死んでも赦されない!」

――察し。
そうか。うん。この人、あれか。
スティーブンさんの言葉を受けた旦那は、驚いたように目を見開いた。そりゃそうだ。こんな言葉を投げつけられたら――って、ん?
旦那はどうしたことか、顔を俯かせ、そのまま小刻みに震えだした。な、なんだ? いったい何だって言うんだ?

「ふ、ふふ、ふははははははははは!!! 愉快だ、愉快だぞスティーブンッッ!! お前は最高だ、最高としか言いようがない。パーフェクトだスティーブン! お前のような男にあえて良かった、ああ――ヤンデレっていいよね!!!」
「クラウスを騙った事。死んで償え」

……そうか。旦那のほうもあれだったか。
噛み合わない会話の後、二人は激突した――。



「なにあれ」
「あ、スティーブンさん(二人目)」
「どうも、ザップ(仮)。にしても別世界の俺、怖すぎだろ。ヤンデレ怖い」
「いやぁ……旦那嬉しそうでしたよ?」
「なんなの腐女子って、最強なの?」
「いやー……旦那が特別なんじゃないですかね。俺も腐ってますけど、あそこまでじゃないです」
「そうか……」
「それでスティーブンさんはそっちのクラウスさんと付き合ってるんですか?」
「!!??」

避難先に一足先にいたスティーブンさんと言葉を交わす。
スティーブンさん(二人目)は露骨に驚いたような表情をする。俺のところのスティーブンさんやさっきのおっかないスティーブンさんと違い、結構思ったことがそのまま顔に出てしまう人なのだろうか。

「や、やっぱり君たち腐った人たちはわかるのか……!?」
「なんというか、おっかないスティーブンさんも凄かったですけど、旦那も凄かったんですね……」
「ああ、キャラとか外見とか外聞とか、何も考えてなかったぞ」

現在進行形で戦っているスティーブンさんも気にしていないようだったし、気にしてるの俺と今隣にいるスティーブンさんだけか。二人とも自由すぎないか?
スティーブンさんを慄かせた旦那は何を言ったのか。しかしこの焦りよう、あの旦那の外見で腐女子のパワーを発揮したのか。旦那恐ろしすぎだろ。
少々俺にも刺激が強かったので頭の中からシャットアウトして、スティーブンさんへ向き直る。どうせ二人が戦い終わるまでは暇なのだし。

「折角ですから、同じ境遇同士ちょっと話しましょうよ。いろいろ大変だったんじゃないですか?」
「ああ……そうだな。ここの空間から出るといっても、あの二人が大人しくなるのを待つしかないか。俺も、話が聞きたいと思ってたんだ」

にこりと笑うスティーブンさんは、どこか優しげで、スティーブンという人物になる前は女性だったのだろうなとなんとなしに思った。
俺も笑い返すと、もしかして前世は女だったか? と問われて、意外に顔に出るものだなと思いながら、戦闘中二人を抜いた奇妙な境遇を持つ者たちの――スティーブンのような誰かとザップのような俺の、懐かしい昔話が始まった。





――そうして数時間後、四人の意識は真っ白に包まれ、それぞれの自宅で起きたころには夢の記憶をなくしていた。





今回の座談会参加者

スティーブン(連載主)
ザップ(普通になります主)
クラウス(netaの腐り野郎)
スティーブン(クラウス教狂信者)New!




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「BBB成り代わり主達で座談会」
柊鬼さんへ捧げます!
リクエストありがとうございます!
はい、増えました! 見てわかる通り増えました!
クラウス教狂信者のヤンデレスティーブンさんが増えました。
ちょっとでも正常だと突っ込み役にならざるを得ない。連載スティーブンと普通ザップお疲れ様です。
ちなみに、意識が白に飲み込まれるまで(最後まで)クラウスとスティーブンの二人は戦闘をやめませんでした。クラウスは終始笑顔でした。こいつら頭いかれ――ごほごほ。
書いててとても楽しかったですw なんというか、主要メンバーではないヤンデレスティーブンがとても出張ってしまったので、ご希望に沿っているか戦々恐々なのですが、楽しんでいただければ幸いです。
では柊鬼さんリクエストありがとうございました!!



ちゃんとした座談会(があったらこんな感じになってました)

「よし、では病みスティーブンも縛り付けられたことであるし、折角の同じ境遇同士の集まりだ。話し合いを使用ではないか」
「はーい」
「なんだザップ(仮)」
「話し合いになるまで長引いたの、半分は旦那(仮)のせいだと思いまーす」
「ふむ。私は病みスティーブンに付き合っただけなのだが……しかしザップ(仮)のその先生に対する生徒のような物言い、とても可愛いぞ」
「あざす」
「なんだこいつら……」
「殺す」
「……君も大概だな……目が怖いし」
「当たり前だクラウスがどこの骨かもわからない馬鹿に侮辱されているんだぞお前はスティーブンとして怒りを覚えないのか」
「いや、そりゃあ意図して乗り移ったとかなら許さないが、このクラウス(仮)はそうじゃないだろ」
「善良スティーブン……私は嬉しいぞ。ところでそちらのクラウスとの蜜月を教えて欲しいのだが」
「ばっ……! 蜜月ってな……!」
「キサマモコロス」
「うわぁ、病みスティーブンさんやばいですねこれ……。一体どういう経緯を経ればこうなるんすかねぇ」
「そうだな……そうだ、病みスティーブン。そんなに殺す殺すという前になぜそこまでクラウス(真)を信仰するのかを我々に教えてくれまいか」
「…………仕方ない。教えてやる」



「あーーー……なるほど」
「さすが旦那……確かに信仰したくなる気持ちもわからないでもない」
「い、いや、ちょっと待て、聞いた限り、ほとんど俺の経緯と一緒なんだが……」
「「えっ?」」
「確かに俺もクラウスに恩を感じていて、クラウスがいない世界なら生きている意味もあまり感じられないが、だからと言ってそこまで行くか?」
「なんだと? お前はクラウスに助けられながらクラウスを神と崇めていないとは何事だ!」
「……つまりあれっすかね」
「つまりあれだな」
「な、なんなんだ、一体」
「つまり、病みスティーブンさんも善良スティーブンさんも似たような世界の人間だってことですよ。元々の魂まで一緒かは分かんないっすけど、いうなれば近い平行世界とかの存在ってことなんじゃないですか?」
「つ、つまり、俺ももしかしたらこうなってたかもしれないって事か?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「」
「善良スティーブンさんの魂が!」
「……おい、もう一人の俺」
「……( ゚д゚)ハッ! な、なんだ、もう一人の俺」
「今までの愚行は許されないものだ。クラウスを慕うのはクラウスなのだから仕方が無いが恋仲になるなど言語道断! だがお前が心を改めクラウスの信者、つまり下僕となるのならば僕は友人としてお前を歓迎するよ」
「なんだその清い笑顔は!? やめてくれ、俺は今幸せなんだよ!」

「ステクラ前提のスティスティか、いいな」
「俺はやっぱりクラステっすかねぇ」
「王道だな。だがしかし私はステクラ、クラステ、スティスティ、ザプステ、ステザプ……今回得た尽く(ことごとく)を本にするぞ……!」
「なんか、俺も入ってんすけど」
「安心したまえ。出来上がったら君にも1部渡そう」
「まじっすか! わかりました、待ってます!」

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