- ナノ -
女が、羽を羽ばたかせている。
カラカラカラ、笑いながら、目に見えない羽を、必死にはばたかせている。

引きちぎりたいような、そうでないような。

「扉を探すの?」

無関心の塊の言葉を投げかけられ、そうして無関心の瞳が男を射抜く。
何も意見は言わない。ただ関心を持てずに、女は男を見つめる。

「世界の終わりで、待っているんだ」

何を待つのか、男は分からなかった。
扉を待っているのか、それとも終わりを待っているのか。
それとも。

「来てくれるといいね」

カラカラ、女は笑った。
だが、どこかそこには哀愁が漂っていた。
まるで、それがヴィンセントの終わりだとでもいうように。


カラカラカラ