女の脳髄が飛び散って、血液が噴き出して、顔面が潰れる。
そんな光景を見た気がした。だが、思い出せない。
そうして、彼女はまた現れる。
蝶の羽から、生まれる。
「酷い」
開口一番発せられた、鋭く短い言葉に男は覚えがあった。
無いとは思わなかった、引き金を引いた感触が残っている。
女は、自分の身を抱きすくめるようにして言った。
「私のアイス、食べたの」
そうして、わざとらしくしくしくと泣き始めた。
女の言葉が理解不能なのは、いつものことだった。
数える気力もない思考は、しかし今回の邂逅が両手で数えられる数を超えたことを覚えていた。
女は、両手で覆っていた顔を晒し、そうして笑う。
「夢って便利ね」
愚痴を聞いてくれる相手が、こんなに簡単に見つかるんだもんね。
ふふ、と笑う女は、まるでただの子供だった。
「あっ、これ」
ソリタリアだ。
嬉しそうにゲームの名前を当てる女は、そこにある玉を弄り始めた。
机の上にあったそれは、ヴィンセントがよく動かし、そうして一人遊びするそれだ。
以前の夢ではなかったそれが、突然現れていた。
青い玉がゲームの上を女の手によって踊らされていく。
女の白い手が、楽しそうに弄り回して、そうして玉をとっていく。
「一緒にやろうよ」
ほら、と玉を一つ男に向かって投げる。
青い球体が、男を映した。
ソリタリア