- ナノ -
じゅう 


兵器のミサイルに乗り込み、ジョードの元へ乗り込む。
しかしそこにあったのはジョードの死体と赤い男の抜け殻だけ。
だが、そこには最後の可能性があった。

そう、ヨミエルの亡骸だ。

ようやく、この時がきた。
最後だ。

この想いが、なくなる最後の時がきた。


誰も彼もが過ちを抱えている。
それはジョードも、ヨミエルも、そして私も同じ。
過ちがないのは、動物だけではないだろうか。

「――でください」

運命は更新される。
アシタールの隕石はヨミエルの身体を突き抜けることはなく、ジョードの足へ突き刺さる。

「――ないでください」

しかしジョードはその銃を彼に向けたまま、そうして発砲する。
その弾は、美しい直線を描いてヨミエルの胸へ直撃する。

そんなこと、させるものか。

「死なないでください」
「カナリア!?」

世界の時を止める。
更新された世界で、彼は――ヨミエルは死んでもいいといった。
それが自分の行った天罰だと、それで10年の過ちが覆るならそれでいいと。
いいわけがない。
そんなこと、許さない。

だって、貴方が死んだら悲しむ人がいるでしょう。
貴方が死んだら、その運命を共にする人がいるでしょう。

涙が溢れる。
前が見えない、世界が霞んで、ぼんやりとする。
知ってる。彼が死なないことぐらい。
でも、でもやっぱりそんなことは言わないでほしかった。
貴方はいいかもしれない。ママもいいかもしれない。
彼らは愛する相手のことを考えながら逝けるのだから。
でも私はそうじゃない。
まだまだ赤子の私は、死ぬなんてことも考えられずに、ただただ愛する人たちがいなくなった事実を抱える。

嫌だ。嫌だよ。死なないで。
死ぬんだったら、ちゃんと私も連れて行ってよ。
この想いを、消していってよ。

mae ato