- ナノ -



  Z


と思ったのだが。
何故か色々子供達に利用されている私。何故。
どうやら子供達からしたら、私の立場は転生者から地上を守る生き神扱いなのだそうだ。

……いや、確かに記憶が曖昧で、しかし強力な力を行使してしまう転生者の鎮圧に昔から力を貸してきたわけですが。
まぁいいんですけどね。子供達が動くために必要ならば、私はただの一つの駒として動きますとも。

さすがに私の血が混じったグリゴリの子供達を道連れにする気はないが、私の命ぐらいなら差し出そう。
そうして世界が滅んでも、それが子供達が歩んだ道だと諦めよう。

そんなわけで子供達に言いように扱われ、転生者研究所とやらに来ているのだが。

「……(ヒュプノス)」
「―――」

ヒュプノスがいた。
ちょっと外見は変わったが(地上人っぽくなった。いや、地上人か)、それでも見間違えるはずもない。私の愛しい子供の一人、ヒュプノスだった。

私が天上を離れたすぐ後に死した。愛しい弟。
ああ、変わらないな。始めてみたときの赤子からまったく変わっていない。
一度死んで、転生したヒュプノスは信じられないような面持ちでこちらを見ている。

覚えていてくれたらしい。転生者というのは、私の転生と違って意識までは引き継がないらしい。
私の場合は完全に全てを持ち越して、意識が継続する感じだが、彼らは一度区切りをつけてから新たな魂として記憶を刻み付けていくらしい。
そのため前世の記憶が曖昧だったり、人格や見た目がまったく違ったりする。

でもそれでも私の愛した子供達で、これからも愛する子供達である。何も変わらない。
ヒュプノスであるが、ヒュプノスでない男。

『あに、じゃ、兄、者、兄者、兄者!!』
『――ああ、ヒュプノス。久しいな』

久しすぎて行き成り行われた念派についていけなかった。私も歳だろうか。
しかし男は興奮しすぎているらしく、会話が通じない。どういうこった。

『落ち着け』
『これが落ち着けるか! ああ、兄者、ようやく見つけた!』

う、ううん。どうしよう。熱烈すぎて、頭が痛くなってきた。
困りながら彼の言動を聞いていると、どうやらここで逃してしまったらもう私に会えないとか考えているらしい。
いや、会える……わけではないが、念派はどこへでも通じる。それぐらいの力量が互いになければならないが、彼はそれを有している。

『再び会いまみえたいなら、グリゴリ族の島へ来い』
『グリゴリ……分かった。必ず行こう』

愛しい子よ。それは嬉しいし楽しみだが、今は傭兵として任務とやらについているのではないのか?
そんな疑問を男の勢いに飲まれ紡げないまま、とりあえず一戦してその場を去った。

いや、ちょ、可愛い可愛い我が弟よ。戦闘終わったのに、いつまでもラブコールを送るのはやめてくれないか?
ちょ、他の子等に勘ぐられているぞ? おおーい。

 [back]