- ナノ -



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数千年が過ぎた。

……いや、本当に千年単位とは、恐れ入った。
というか、本当に長生きだよね神って。普通に生きてますよ。健全ですよ。でも結構歳は喰った。黒髪も白髪に変わってしまったし。でも禿げてないってどういうこと。
肌の色は元からガングロなので問題はない。いや、ある。皺が増えた。

悲しかな。転生したいが天上がなくなり転生先が人間しかないので、無理である。
だって力ないし。今この状況で力なくなったら完全に世界が崩壊する。あれだ。威厳が出てきたと思えば良いのか。なるほど!

なんだかんだいって、色々工夫を凝らし、愛しい子供達が住む世界を温存させることが出来ている。
しかしそれでもいつまで続くか。いい加減子供達に行動を起こしてほしい。いや、無理強いしてるのは分かってるんだが。
滅亡させたくないんだけどなぁ。

子供達がたくさん死んで悲しかった。そして全てがなくなるのはいやだった。
それは確かだが、やはり子供達のことは子供達でケジメをつけなければ。
親が口を出すのはどうにもいけない。

それにそんなことをしていたら、きっと子供達は前に進めない。
進歩をせずに、その現状に甘えてしまうことだろう。
だから確実に破滅へ向かう道をどうにかしようとしないし、現状を見つめ続ける。

……いやでもちょっとぐらい手を貸しても――ってハッ! 何を彷徨しているんだ私は!

しかし私の血を受け継ぐ子供達もだんだんとその役割を忘れていっているようで、もう本当に世界終わんじゃね? な勢いである。
唯一私を信仰する気持ちがまったく薄れないところだけが僥倖だ。



と嘆いていたら、ようやく、ようやく事が動き出したようである。
天上にいた大勢の魂は時が満ち、一斉に地上に降りて、転生を行った。
本来転生とは天上でしか巡らないものだが、天上がなくなったことでそれは崩壊した、というのは説明済みな気がする。

ちなみに、地上の魂は天上の糧として循環し消費されるだけなので、転生ではなかった。
本来は皆がみんな循環するようにしていたが、まぁ天地別れたときにぶっこわれましたよねはい。

それで、天上の魂が地上に転生したのだが、その転生者がどうにも普通の人間ではなかったようだった。
神であったころの力が使える、即ち天術というものが使える(私命名であるが)ものたちが生まれたらしい。

大地の女神がそんな力使える節まったくなかったから考えてもいなかったのだが、女が死したあと、同じように地上へ転生してきた子等を見ている間に、そういう力があるということは知っていた。

彼らは記憶は曖昧だが、使える力は強大だ。天上の力をそのまま引き継いできてしまったらしい。
本来ならば廃れた地に力として恵みを与えるはずの天上の者達が扱っていた力だが、どうにもシステムが歪なためにしっかりと循環していないらしい。

とりあえず、転生者として生まれ、しかし記憶は曖昧で力は強大。そんな彼らが時折発生させてしまう暴走を抑えるという役割をグリゴリ族は新たな仕事として請け負うことになった。
しかし、残念ながら転生者に対する力を覚醒させない対処などは今のところない。
基本は壊れかけの世界を支えることが第一だったので、そこまで思考が回っていなかった。三人寄れば文殊の知恵というが、グリゴリ族として孤島にいる間は外との接触を完全にシャットアウトしているしなぁ。あちゃー。


――とまぁそれは置いておいて、天上崩壊で散っていった魂の転生者が生まれた。

グレゴリ族からしたら良い迷惑なのだが、私からしたら喜ばしい限りだ。
あの時死してしまった子供達がようやく身体を持ち、動けまわれるのだ。

だが、どうやらそしてその転生者たちが、なにやら動き出しているらしい。
それと呼応するように地上での戦争という名の子供達の殺し合いも活発化してきているし、これは吉と出るか凶と出るか。

私は世界を支えるだけ、後は子供達の仕事だ。
子供達が紡ぐ、愛しき未来の話だ。

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