- ナノ -



  閑話U


転生に縛られてはならぬ。
転生とは新たに進むための一歩。死からの復活。別の生。
それがいつまでも前世に縛られていては意味がない。
それがプラスになることもあるが、マイナスになってはならぬ。

「チトセと、ハスタ。か」
「ああ、哀れな奴らだ」

既に意志のない身体を撫でる。
ハスタはこの塔のもう少し下にいるらしい。
愛しい子。しかし、悲しい子。
この子達も大地の女神と同じだ。

特別というものが出来て、ようやくわかった。
大地の女神は、前世の記憶があったのだ。
そして、天術と呼ばれる力も。

しかし前世を持っていると私に知られても愛してもらえないと思ったのだろう。
何故だかはしらん。ただ、地上人として見てもらいたかったのだろう。
確かに私が求めていたのは地上人だった。彼女はそれを知ったのだろうか。

だが、だからこそ彼女は素を隠し、私に人として付き添った。
最期まで。
彼女は幸せそうだった。とても、最期まで私といて。

だが、それは悲しい。
そう、悲しい。

だから、開放しよう。
前世に縛られ続ける転生を、解き放ってやろう。我が子よ。

「苦しむなかれ、自由を放棄するなかれ、前世に縛られることなかれ、転生の輪にて、新たな道を歩け」

小さな少女の頬を撫で、そう願う。
少女の身体は光を放ち。そして一つの魂となり、天へ帰る。
カラリ、と刃が床に落ちる音がした。

ハスタという者の場所に行くことも約束してもらった。

「でもアイツ、最期まで幸せそうだったぜ」
「だからといって、死を快感とする世の理と正反対の思想を持ち続けるのは苦痛であろう。
 本人が自覚しておらずとも、な」

大変なこったな。というベルフォルマに、当然だと返す。

「私はこの世界の全ての子等を愛している。このぐらいの施しはなくてはならん」

小さく笑えば、そうかよ。という声と赤く染まる頬が見えた。

……子供ってかわいいなぁ。
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