- ナノ -



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とりあえずちゃんと伝達を聞いて、用意していたもてなしの数々をお披露目する。
どうやら適当に話はつけたようで、こちらを警戒しつつも一応食事をしてくれる子供らに思わず微笑ましくなる。

食事は基本質素なものなので、客用に豪勢にしてもらった。
しかしベルフォルマやミルダ家は確か豊かな生活をしていると聞く、口に合えばいいんだけどなぁ。

まぁ一応は食べられるものだったようで、口に運びながら将来の夢の話をしている彼らをみると、やはり子供達を守りたいと思う。
具体的には滅亡はさせたくない。
営みは愛すべきもの。だから滅亡しても仕方が無い――そう考えていた昔が少し遠い。
何千年と子供達が欠ける様を見ていたためか、酷い寂しさが胸をもたげるのだ。

と、そんな感傷に浸っているわけなのだが、どうしてかヒュプノス――リカルドは彼らとともに食事を取っていない。
何故か私の隣に陣取って子供達を見つめている。

「……お前は食べないのか?」
「心配ない。一食抜いたぐらいで倒れはしないぞ」
「そのような問題ではない。さっさと食って来い。和解したのだろう」

そう急かすと、こちらを何か含みを持った目で見て、そのまま子供達の方へ渋々と歩いてゆく。
その後に子供達から「分かってへんなぁ、おっちゃんの兄ちゃん」とかいう声が聞こえたが、何が分かってないのだろうか。

軽く悩んでみたが、結局分からなかった。
何か不満を持たせるようなことをしてしまったのだろうか。しかし子供達の心は分からないから、出来れば声で言ってほしいなぁ。
子供達は感情豊かでなかなかついていけない。


食べ終わった頃合を見て、子供達に近付く。
途端に警戒した子供らに、少し困りつつ、この島につれてきた本題に入る。

「――マティウスという者は知っているな」

私の愛しい子供の一人。営みの中、憎悪と苦痛にもまれ、世界を否定した、悲しい子。
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