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シュヴァーンなレイヴンと少女の(Tales・レイヴン)

何をされたかよく分からなかった。
横で普通に話していたレイヴンさんが、いきなり凄く近くに居て、そうしたら行き成り唇になにかかさついた、でも柔らかい感触が広がって、そうして離れた。
だから、何か事故でも起こったのかと思った。
でも回想したりして考えてみればみるほど何をやったかは歴然で、顔がだんだん熱くなった。

「れ、レイヴンさん。あ、あの、何を……」
「キスをした」
「で、ですよねー……。……!!??」

ふ、普通にキスしたっていいましたよこの人!?
もう頭が沸騰するほど熱くなって、身体も火照ってくる。
い、いや。何をこんなにどうようしているんだか。そうだ。レイヴンさんにとってこれは挨拶なんだ。きっとそうに違いない。
あれだ。女性に百戦錬磨なレイヴンさんだから、こんな小娘にもこういうことを平気でしちゃうんだ。そうだ。きっとそうだ。

「あ、あのですね。さ、さすがにキスは駄目ですよ」

でも駄目だった。私は駄目だ。だってレイヴンさんのこと好きだもん。
いくらリタやジュディスから止めとけ、とか胡散臭いから、とか言われたって、やっぱり好きなものは好きなのだ。
だから、いくら挨拶だってキスはもう、なんか、凄く甘い蜂蜜みたいな味がしたし、触れた唇はグミみたいな優しい柔らかさって思ったし、私のことを見つめていた近距離の瞳はもう、濁った宝石のようだと感じてしまうのだ。
だから、駄目だ。これは駄目だ。嬉しくて、でも苦しくて、挨拶だったとしても、もっと欲しがってしまうから、駄目だ。

でもどこかで嘘でも事故でも嬉しい! なんて感情があるから、柔らかい否定になってしまう。
これじゃあ私がキスを欲しがっているのが分かってしまうじゃないか。

レイヴンさんは暫く無言だったかと思うと、そっと私の頬に手を当てた。
う、うわ、うわああああ、あ、あったかっ、あったかいいいいぃぃぃ!

「生江は嫌だったか?」
「へ、」
「私とのキスは嫌か?」

いつもは生江ちゃんなのに、呼び捨てとか、一人称が俺様じゃなくて私とか、色々突っ込みたいことがあったが、もうそれどころじゃなかった。
なんだこのレイヴンさん。どうしよう、こんなレイヴンさんも魅力的過ぎて死ねる。
胸が爆発しそうなこの状況。え、って、ちょ、なんてまた近付いてきて、ふ、ふえ

(触れる0.1秒前に、周りで状況を固まってみていたメンバーにレイヴンさんがふるぼっこされていた)

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bkm