「死にたい」
「な、何をおっしゃるのですか、劉弁様」
いやぁ、何をおっしゃるって死にたいっておっしゃってんだよ劉備さんよぉ。
隣で動揺する緑を脇に捕えながら、はぁと溜息をつく。
どうにか劉備を仲間に引き込むことはできた。まぁ大義名分が一番大好きな義に厚い劉備君のことだからお友達と一緒に来てくれることはなんとなく分かっていたが、結構苦労した。なんだよお前の友達。私が帝として相応しいかどうかとか持ち出してくるんじゃねぇよ相応しいわけあるか馬鹿野郎。
「だって諸葛亮君は私のこと馬鹿にするし、ホウ統はお酒を飲んで絡んでくるし、趙雲は槍を片手に死合いましょう!って脅しかけてくるし、関羽は髭触らせてくれないし、張飛は私の酒を横取りするし」
「……き、きっと、皆も劉弁様に親しみを感じられているのですよ。私にも劉弁様、と呼ぶ資格を与えてくれたではありませんか」
親しみってなんだっけ。それって皇帝に抱くもんだっけかねぇ。
あと、劉弁様っていうのは私が「劉弁って呼んでもいいんだよ! だって親戚だもんね早く早くハリーハリーハリィイイ!!」って息巻いて君が半泣きで「劉弁様で勘弁してくだされ!」って言ったからそうなったんだよ? また脅してあげようか?
まぁ別にいいよ。親しまれていたって、煙たがられていたって殺意を向けられていたってやることは一つだからね。
「劉備」
「な、なんでしょう」
「君のお友達がいくら私を軽く見ようが親しもうが煩わしく思おうが、君はそうであってはいけないよ」
叶わない夢を叶えるために、君のその熱い心は必要なのだから。
にっこりと笑いながら言えば、途端に劉備は膝をついて頭を下げる。
うん、さっきまで舌を噛んでた人とは別人みたいですねー。
「承知いたしております。我が主は、劉弁様ただ一人でございます」
「うんうん。偉いね」
こちらに向いている後頭部をゆるゆると撫でて、そのまま耳を引っ張ってこちらを向かせる。上を向いたその顔の手を這わせて、じぃっとその瞳を見つめた。
「私の願いは、壮大で強大で、そうして難解だ。その為には君の義に反することも度々あるだろう。君のお友達が苦しめられることもあるだろう。だが、私は成し遂げなくてはならない。民を導く皇帝として、君の主として」
「はい……分かっております」
「うん。ごめんね」
きっと、戦で散っていく者もいるだろう。
志半ばで消えゆく者もいるだろう。
それでも、私は夢を追いかけ続ける。ただただ愚直に。
だから。
「劉備。君は、私の理想の糧となってくれるかい?」
「ええ。喜んで」
だから、君みたいな人は、とっても都合が良くて
「大好きだよ。劉備」
「………は、はい」
顔赤くすんなって、見捨てるときに心苦しくなるでしょうが。
まぁ、そんなことにならないように頑張りますが。
まったくもって題名にそっていない件について。