- ナノ -

呂布ヘタレ話(対張遼の場合)
リアル鬼ごっことはこのことか。
私は城をこそこそと隠れながら移動している。
自分の部屋について不貞寝が出来れば成功。失敗すれば――。

「呂布殿! 見つけましたぞ!」
「張遼! くそっ」
「お待ちくだされ!」

待つかこの戦馬鹿!

ただいま我が軍の、我が部下であるはずの張遼とリアル鬼ごっこ風。
捕まったら殺られる。
相手は完全装備で武器まで携えている。
私だって毎度のことこのやり取りをしているから防備は完璧だが、肝心の武器がない。
といっても、あっても意味がない。寧ろ逃げるのに邪魔になるだけだからいらない。

張遼は養父時代からの部下だったわけだが、俺についてきた輩の一人だ。
どうやらコイツは自らの意志で軍についてきたらしいが、今のところどうでもいい。
どうでもいいが、そんなソイツが俺に対して決闘を何度も何度も申し込むのがどうでもよくない。
なんで毎回そんな血が噴き出るような恐ろしいことを挑んでくるんだ。頭おかしいだろ!

もう、この時代の武将といういう生き物の気持ちがまったくもって分からない。
なんで強い奴と戦いたがるんだ! そんな死に急ぐような真似をして、命が惜しくないのか。
自分も、一応修羅場を潜り抜けてきたわけだから、それなりに土壇場には強くて、体の方が頑丈なので弱いということはないだろうが、それでも嬉々として戦いを挑んでくる輩の相手になってやるほど心は広くないッ!

ということで逃げる。ただただ逃げる。逃げの一手だ!

「なぜお逃げになる呂布殿!」
「お前がしつこいからだ!」

このストーカーめ! 訴えるぞ!

そんなこんなで鬼ごっこは続く。
最終的に寝床で襲われた時は、殺してやろうかと思った。



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bkm