- ナノ -

罪人B
青年が剣呑として様子で口を開く。
こちらはびくびくするしかないので、黙ってその言葉に耳を傾ける。

「俺の名はユーリ。ユーリ・ローウェル。こっちはレイヴンだ。
 そんで、この世界の状況だったな。確かアンタ、記憶はないはずだったが、どうしてそんなこと聞くんだ?」
「そんなことって、青年」
「おっさん。俺は、どうしてコイツが記憶がなくてこの世界に星喰みがあることが普通じゃないと思わないのかってのが怪しいんだよ」

なるほど。そういういことか。
青年はかなり頭が回るらしい。その疑問を元に、私が記憶を失っていないか疑っているようだ。
だが、残念ながら確かに記憶はないし、この世界の元の姿にも覚えはない。

「ただ、嫌な雰囲気を感じただけです。これが常かそうでないかは分かりませんでしたが、気になってしまって」
「じゃあ、記憶のものと比べて違う。って思ったわけじゃねぇって?」
「はい。そうです」

なんだろうこの、尋問される犯人みたいな心境。
そう思っていれば、噂をすれば影と同じ原理なのだろうか。

「知らねぇなら教えてやる。これは星喰みって言って、今世界を壊そうとしている災厄」
「青年!」

レイヴンという男がローウェルの口を止めようと呼び名を叫ぶ。しかし彼は聞き耳を持たずに、先を紡ぐ。
どうやら私は。

「そうしてそれを封印から解き放ったのが、紛れもねぇ、アレクセイ。アンタだ」

罪人らしい。


prev next
bkm